パーマー・マンション

パーマー・マンションの歴史と建築

パーマー・マンション（Palmer Mansion）は、1882年から1885年の間にアメリカ合衆国イリノイ州シカゴのニア・ノース・サイド地区に建設された、当時のシカゴ最大の私有邸宅です。本邸宅は、シカゴの湖岸に位置し、1350 N. Lake Shore Driveに存在しました。建築家のヘンリー・アイヴス・コッブ（Henry Ives Cobb）とチャールズ・サマー・フロスト（Charles Sumner Frost）の設計により、実業家であるポッター・パーマーと妻バーサのために建設されました。ポッター・パーマーはシカゴの財界での重要人物であり、ステート・ストリートを開発した実績が評価されています。

設計と建設

パーマー・マンションの建設が始まった当初、ポッター・パーマーは既にシカゴの重鎮として知られていました。しかし1871年のシカゴ大火によって多くの建物が焼失し、彼はその後の再建に力を注ぎました。マンションの建設が始まったのは1882年で、外装が完成したのは1883年でしたが、内装の工事にはさらに二年を要しました。

この豪華な邸宅の内部デザインは、別の建築家であるジョセフ・ライマン・シルスビー（Joseph Lyman Silsbee）の監督のもとで完成されました。初期の建設費用は約9万ドルと見積もられていましたが、実際には工事が続く中で費用は100万ドルを超えたとされています。

社交の場としての役割

パーマー・マンションは多くの社交イベントに利用され、元合衆国大統領のユリシーズ・S・グラントが訪れたことでも知られています。特に1893年の世界コロンビア博覧会の際には、様々なレセプションが行われ、バーサ・パーマーの手腕が光りました。また、ウィリアム・マッキンリーやジャームズ・A・ガーフィールドら、他の大物政治家も訪問しました。さらには、ベルグア公爵夫妻やスペイン王女エウラリアといった国際的な著名人も招かれました。

所有権の変遷と取り壊し

1902年、ポッター・パーマーが亡くなると、妻のバーサには800万ドルの遺産が残りました。彼女はその後も長くパーマー・マンションに居住し、フロリダに不動産を所有するなど、商才を発揮しました。バーサの投資によって遺産は倍増し、1918年には約1500万ドル残しました。

1930年、息子たちはこのマンションをヴィンセント・ヒューゴ・ベンディクス（Vincent Hugo Bendix）に300万ドルで売却しました。ベンディクスは、特にバーサが収集した絵画コレクションに興味を持ち、さらに自身のコレクションを加えます。彼はこの建物を「ベンディクス・ギャラリー」と呼び、新たなエレベーター設置や自身のための美容室を設けました。しかし、1933年には彼の計画が変更され、マンションは解体が決まりました。1950年から1951年にかけて建物は解体され、その跡地には740戸を擁する22階建ての高層アパートが建設されました。

建築様式

パーマー・マンションのデザインは、コッブとフロストによる初期ロマネスクやノルマン・ゴシックに触発されたものでしたが、古典的なドイツ貴族の城にも似た様式とされています。内部にはイタリアネイト様式の大ホールがあり、その他の部屋は様々な歴史的建築様式が反映されています。ルイ14世風のサロンやインド風の部屋、オスマン様式の弟子部屋がありました。特に目を引く大舞踏室には、長さ75フィートに及ぶ素晴らしい作品が飾られていました。

また、建物の外観は多様な小塔や尖塔で飾られ、内部には高さ80フィートの螺旋階段が設けられていました。マンションの構造は、他に類を見ない特徴を持ち、住居者や訪問者を魅了しました。

パーマー・マンションはその歴史的価値や文化的影響からも、シカゴの重要なランドマークとして記憶されています。

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