パーヴェル・パヴロヴィチ・デミドフ

パーヴェル・パヴロヴィチ・デミドフ：慈善家、実業家、そしてサン・ドナート公

パーヴェル・パヴロヴィチ・デミドフ（1839年 - 1885年）は、ロシア帝国の富豪一族デミドフ家の一員であり、実業家、法律家、慈善家として名を馳せました。また、サン・ドナート公の称号も受け継いでいます。

生涯

フランクフルトで生まれたパーヴェルは、父パーヴェル・ニコラエヴィチ・デミドフ伯爵と、母アウローラ・スチェルンヴァルの間に生まれました。幼くして父を亡くし、母はアンドレイ・カラムジン将軍と再婚しました。

結婚と家族

1867年、パーヴェルはマリヤ・メスチェルスカと結婚しますが、彼女は翌年、長男エリム・デミドフ出産後に急逝します。その後、1871年にエレナ・トルベツカヤと再婚し、6人の子供をもうけました。娘の一人、アヴローラ・デミドヴァは、セルビア王ペータル1世の弟アルセンと結婚しています。

最初の妻マリヤの死はパーヴェルに大きな衝撃を与えました。彼は、マリヤとの思い出が詰まったヴィラ・サン・ドナートを売却し、エレナと共にヴィラ・ディ・プラトリーノに移り住みました。このヴィラは後にヴィラ・デミドフと呼ばれるようになります。

デミドフ・コレクションの分散

ヴィラ・サン・ドナートの売却に伴い、一族の莫大な美術コレクション「デミドフ・コレクション」の大部分がオークションにかけられ、分散することになりました。このオークションでは、叔父アナトーリー・デミドフが所有していたナポレオン関連のコレクションも売却されました。

慈善活動と社会貢献

パーヴェル・デミドフは、その莫大な財産を社会貢献に役立てました。露土戦争では、ロシア軍だけでなく赤十字の支援にも尽力しました。また、ユダヤ人問題にも関心を寄せ、『ロシアにおけるユダヤ人問題』という著書を出版しています。

ヨーロッパ有数の富豪

パーヴェル・デミドフは、ロシアに多数の工場を経営し、広大な領地と宮殿を所有していました。その財力はヨーロッパでも屈指であり、一族の富をさらに拡大しました。1870年には叔父アナトーリーからサン・ドナート公の称号を受け継ぎ、1872年にイタリア王にその称号を認めさせました。

パーヴェル・パヴロヴィチ・デミドフは、単なる富豪ではなく、社会に貢献した慈善家、そして文化の保護者として、その名を歴史に刻んでいます。

参考資料

* Jewish Encyclopaedia

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