パーヴェル・メドヴェージェフ

パーヴェル・メドヴェージェフ：バフチン・サークルとソ連文学を彩った文芸学者

パーヴェル・ニコラーエヴィチ・メドヴェージェフ (1892年 - 1938年) は、ソビエト連邦を代表する文芸学者であり、ミハイル・バフチンを中心とした知の集団「バフチン・サークル」の一員として知られています。サンクトペテルブルクに生まれ、ペトログラード大学法学部を卒業後、第一次世界大戦に従軍しました。

1917年、革命後の混乱期に、メドヴェージェフはヴィテプスクの労働者大学の学長に就任。教育者としてのキャリアをスタートさせます。同時に、雑誌『芸術』の発行人として、出版活動にも携わっていました。この多様な活動は、彼の旺盛な知的探究心と社会貢献への強い意志を示しています。

1922年、ペトログラード（後のレニングラード）の国立出版所に就職。文学芸術部門に勤務した後、同所のレニングラード支部長にまで昇進しました。その後も、演劇雑誌『ガイデプーロフとスカルスカヤの巡回大衆劇団のノート』(1922年-1924年)の編集や野外教育博物館での活動など、教育と出版の分野で幅広く活躍しました。

1925年には、雑誌『星』の定期執筆者となり、さらに1927年にはゲルツェン師範学校の講師に就任。20世紀文学およびソビエト文学に関する講義を行い、後進の育成にも力を注ぎました。彼の教育者としての才能は、多くの学生に影響を与えたことは想像に難くありません。

メドヴェージェフの学術的な業績も高く評価されています。1933年には、『作家の実験室にて』を出版。同年にレニングラード歴史言語インスティテュートの正教授に就任するなど、その地位は着実に盤石なものとなっていました。

しかし、彼の輝かしい経歴は、1938年に突然終止符を打たれます。3月に秘密警察に逮捕され、7月17日に銃殺刑に処せられたのです。逮捕の理由は現在も不明であり、多くの謎を残したまま、彼の生涯は幕を閉じました。

メドヴェージェフの死は、ソビエト連邦における知識人への弾圧の象徴的な出来事として、今もなお人々の記憶に深く刻まれています。彼の著作や活動は、ソ連文学研究において重要な位置を占めており、その生涯と業績は、後世への貴重な遺産となっています。彼の功績と謎に満ちた最期は、これからも研究者たちの興味を引きつけ続けるでしょう。

参考文献
カテリーナ・クラーク／マイケル・ホルクイスト『ミハイール・バフチーンの世界』せりか書房　1990年

もう一度検索