ヒインコ

ヒインコ：カラフルなインコの生態と飼育

ヒインコ（緋鸚哥）は、小型から中型のインコで、東南アジア、オーストラリア、ポリネシア、パプアニューギニアといった地域に広く分布しています。鮮やかな色彩の羽根を持つ種類が多く、その美しい見た目から人気を集めています。英語では「ローリー (Lory)」や「ロリキート (Lorikeet)」と呼ばれ、尾羽の長さや形によって呼び名が使い分けられる場合もあります。短くずんぐりした尾羽のものは「ローリー」、長く先細の尾羽のものは「ロリキート」と呼ばれる傾向があります。

ヒインコの生態

ヒインコは、主に花の蜜や柔らかい果実を食べて生活しています。野生下では、実に5000種類にも及ぶ花や果実を食料源としています。蜜を効率的に摂取するために、ヒインコはブラシのような特殊な舌を持っています。この舌は、非常に細かな毛で覆われており、器用に蜜を吸い取ることができます。

飛行能力も高く、先のとがった翼と尾羽根で、敏捷な動きと巧みな飛行を可能にしています。足も非常に強靭で、樹上生活に適応しています。性格は活発で人懐っこく、しばしば仰向けに寝転がったり、人間の言葉や行動に反応してダンスのような動きを見せるなど、愛嬌のある仕草を見せてくれます。これらの特徴から、ペットとして飼育されることも多い種類です。

ヒインコの分類

ヒインコは通常、ヒインコ亜科 (Loriinae) として分類されます。インコ科の中でも、特に明確な特徴を持つ亜科であり、一部の専門家からは、独立した科（ヒインコ科 Loriidae）として分類するべきという意見もあります。この場合、オウム目（Psittaciformes）に属することになります。

ヒインコの飼育

ヒインコを飼育する際には、いくつかの点に注意が必要です。

餌: ヒインコは花の蜜や果実を主食とするため、市販のヒインコ専用のネクター（液状）やペレット（固形）といった総合栄養食を与える必要があります。フィンチ類やラブバード用のシード餌は、消化不良を起こす可能性があるため避けるべきです。また、ヒインコは消化が早く、24時間以上の絶食は命に関わる危険性があるため注意が必要です。

糞: ヒインコは軟便で、周囲に飛ばすこともあります。そのため、ケージの清掃はこまめに行う必要があります。ペレットを主食にすると、軟便が多少改善される傾向があります。

鳴き声: ヒインコは興奮すると、かなり大きな鳴き声を上げます。ホイッスルのような甲高い声で、長時間鳴き続けることもあるため、集合住宅での飼育には防音対策が不可欠です。人の言葉を覚えさせることで鳴き声が減少することもあります。

しつけ: ヒインコは非常に賢く、根気強く訓練すれば、人の言葉を真似たり、芸を覚えることもできます。ただし、陽気で活発な反面、興奮しやすく、特に成鳥は他の鳥に対して攻撃的になる場合があります。複数飼育する場合は、十分なスペースと配慮が必要です。また、噛み癖がつきやすいので注意が必要です。嘴は鋭く、強く噛まれると出血することもあります。体罰を避けつつ、適切な矯正が必要です。嘴のカットが必要な場合は、鳥類に詳しい獣医師に相談しましょう。

寿命: ヒインコの飼育下での平均寿命は15年から、長いものでは30年と言われています。飼育する際には、最後まで責任を持って飼育できるかどうかを十分に検討する必要があります。

ヒインコの代表的な種類

ヒインコ亜科には多くの種類が存在します。以下に代表的な属と種を挙げます。

Chalcopsitta属: スミインコ、キバネインコ、キスジインコ、ベニインコ
Eos属: クラカケヒインコ、コムラサキインコ、アオスジヒインコ、ヤクシャインコ、ヒインコ、ホオアオインコ
Pseudeos属: コシジロインコ
Trichoglossus属: ズグロゴシキインコ、エビチャインコ、アポインコ、キミドリインコ、ゴシキセイガイインコ、コセイガイインコ、ニブイロコセイガイインコ
Psitteuteles属: クスダマインコ、アカマユインコ、スジハラスミレインコ
Lorius属: ズグロオビロインコ、オトメズグロインコ、シロエリズグロインコ、ヨダレカケズグロインコ、ズグロインコ、ショウジョウインコ
Phigys属: ハナレインコ
Vini属: ズアオムスメインコ、ムスメインコ、ムネムラサキインコ、ノドジロルリインコ、コンセイインコ
Glossopsitta属: ジャコウインコ、ヒメジャコウインコ、ムラサキガシラジャコウインコ
Charmosyna属: ヒメムジインコ、アカノドインコ、ヒトツボシインコ、ブルインコ、タスジインコ、コシアカキスジインコ、ミツアカインコ、アオミミインコ、アカジリムジインコ、アカズボンインコ、キフジンインコ、アカオキスジインコ、コウゴウインコ、オナガパプアインコ
Oreopsittacus属: ヤマムスメインコ
Neopsittacus属: タカネインコ、アルプスインコ

絶滅危惧種

コンセイインコ（英名：Ultramarine Lorikeet、学名：Vini ultramarina）やノドジロルリインコ（英名：Blue Lorikeet、学名：Vini peruviana）など、いくつかのヒインコは絶滅の危機に瀕しています。生息地の破壊や外来種（ネズミなど）の侵入が、主な原因となっています。これらの鳥類の保全のため、さまざまな保護活動が行われています。


ヒインコは、その美しい羽根と愛らしい性格で人気がありますが、飼育には専門的な知識と責任が求められます。本稿が、ヒインコを理解し、正しく飼育する上で役立つことを願っています。

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