ヒエロニムス・ホルツシューアーの肖像

アルブレヒト・デューラーの『ヒエロニムス・ホルツシューアーの肖像』は、1526年に制作された油彩画であり、ドイツ・ルネサンス美術の傑作として知られています。この作品は、デューラーが晩年に手がけた肖像画の一つで、現在はベルリン絵画館に所蔵されています。

この絵画は、板の上に油彩で描かれており、左上隅には「HIERONIMVS HOLTZSCHVER ANNO DO[MI]NI 1526 ETATIS SVE57」という署名が記されています。この署名から、描かれた人物がヒエロニムス・ホルツシューアーであり、1526年に57歳であったことがわかります。

デューラーは、1524年から1526年にかけて、フリードリヒ3世、ヴィリバルト・ピルクハイマー、エラスムスといった親交のあった人物の肖像を銅版画に収めました。油彩画においても、彼は親しい人物たちの姿を描いており、本作もその一つです。ホルツシューアーはニュルンベルクの貴族であり、市参事会員や市長を務めた人物です。デューラーが『ヨハン・クレーベルガーの肖像』や『ヤコプ・ムッフェルの肖像』を制作したのと同じ年に、この作品も描かれています。

『ヒエロニムス・ホルツシューアーの肖像』は、同じくニュルンベルク市長を務めた『ヤコプ・ムッフェルの肖像』とサイズが同一であることから、公式の祝賀会用に依頼され、市役所に飾られた可能性が指摘されています。デューラーは、ホルツシューアーを単なる権力者としてではなく、人間的な尊厳と深みをもって描いています。その緻密な描写は、デューラーの卓越した技術を示すとともに、人物の内面を深く捉えようとする彼の姿勢を表しています。デューラーが、ともにこの世を生き、そして去ってゆく人物を、尊敬の念を込めて描いていることが感じられます。

この肖像画は、デューラー晩年の作品であり、彼の肖像画制作における円熟を示すものとして、美術史的に非常に重要な位置を占めています。ホルツシューアーの表情や服装、そして背景の描写からは、当時の社会における彼の地位や人物像が浮かび上がります。デューラーの緻密な筆致によって、ホルツシューアーの個性と人間性が生き生きと表現されており、観る者に深い感動を与えます。

デューラーは、この作品を通して、単に外見を描写するだけでなく、人物の精神性や内面までも表現しようとしました。その結果、この肖像画は、ルネサンス期の肖像画の傑作の一つとして、後世に語り継がれることになったのです。

参考文献
* Costantino Porcu, ed (2004). Dürer. Milan: Rizzoli

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