ヒステリア (デフ・レパードのアルバム)

デフ・レパード『ヒステリア』：苦難を乗り越え完成した、バンド最大のヒット作

『ヒステリア』は、1987年にデフ・レパードが発表した4枚目のスタジオ・アルバムであり、彼らのキャリアにおいて最大の成功を収めた作品です。全世界で2500万枚を超えるセールスを記録し、バンドを世界的な成功へと導きました。

制作の背景

当初、プロデューサーには前2作を手掛けたロバート・ジョン・"マット"・ラングではなく、ジム・スタインマンが起用されました。しかし、より豪華なサウンドを求めるバンドと、ライブ感を重視するスタインマンとの間で意見が対立し、最終的にラングがプロデュースを担当することになりました。

1984年には、ドラマーのリック・アレンが交通事故で左腕を失うという悲劇に見舞われます。一時は再移植も試みられましたが、感染症により失敗。しかし、アレンはバンドを脱退することなく、彼のために開発された特製のドラムセットを用いて、驚異的な復活を遂げます。

1986年には、モンスターズ・オブ・ロック出演に向けたウォームアップ・ギグが行われました。当初はツイン・ドラム編成でしたが、アレンは単独でドラムを演奏し、完全復帰を果たします。これらの苦難を乗り越えながら、アルバムの制作は進められました。

音楽的な特徴

ラングの完璧主義的な姿勢により、アルバムの完成には長い時間を要しました。制作費も巨額に上り、500万枚以上の売り上げがなければ回収できないと言われるほどでした。収録時間もCD時代を見据えて60分を超え、曲数が多いことによる音質の劣化も懸念されました。

「ラヴ・バイツ」は、ラングが作ったカントリー色の強い曲が原型で、デフ・レパードらしいギターアレンジが加えられました。「シュガー・オン・ミー」は、エアロスミスとRun-D.M.C.のコラボレーション「ウォーク・ディス・ウェイ」に触発されて作られた楽曲です。

反響と評価

『ヒステリア』は、全英アルバムチャートで初登場1位を獲得し、初の全英1位アルバムとなりました。アメリカのBillboard 200でも1位を獲得し、1988年には6週にわたって1位を記録。2018年には、約28年ぶりに全米トップ40に返り咲きました。

音楽誌『BURRN!』では、6人の評論家によるクロス・レビューが掲載され、賛否両論の評価を受けました。『ローリング・ストーン』誌では、「物凄いサウンドだ。どの曲も輝きを放ち、燃えている」と絶賛される一方、ソングライティングにおけるラングの貢献の大きさが指摘されました。AllMusicでは、満点の5点を獲得し、「ポップ・メタルとしては間違いなく史上最高のレコード」と評されています。

30周年記念盤

2017年には、リリース30周年を記念したスーパー・デラックス・エディション盤が発売されました。日本盤には、ボーナスCDやDVDが付属し、シングルB面曲やリミックス・ヴァージョン、ライブ・アルバムなどが収録されています。

まとめ

『ヒステリア』は、数々の困難を乗り越えて完成した、デフ・レパードの代表作です。その音楽的な完成度と、バンドの不屈の精神は、多くの音楽ファンを魅了し続けています。ポップとヘヴィメタルの融合、リック・アレンのドラマチックな復活劇など、様々な要素が詰まったこのアルバムは、まさに音楽史に残る名盤と言えるでしょう。

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