ヒズ・マジェスティーズ・シアター (パース)

ヒズ・マジェスティーズ・シアター：西オーストラリアの文化を彩る歴史的劇場

西オーストラリア州パースの中心部、ヘイ通りとキング通りの交差点に位置するヒズ・マジェスティーズ・シアターは、1904年、エドワード朝バロック様式を代表する壮麗な劇場として開業しました。その歴史は、20世紀初頭のパースの隆盛と深く結びついています。西オーストラリアのゴールド・ラッシュによる経済発展は、華やかな建築ブームを巻き起こし、この劇場もその象徴と言えるでしょう。

建物の建設と初期の歴史

1902年に着工、1904年のクリスマスイブに開業したヒズ・マジェスティーズ・シアターは、当時オーストラリア最大規模の劇場でした。2,500席を超える客席と、オーストラリア最大級の舞台、そして高さも際立つフライタワーを備えていました。注目すべきは、鉄筋コンクリート構造の先駆けとなった建築物であったという点です。パース、ひいてはオーストラリアにおける鉄筋コンクリート建築の初期の成功例と言えるでしょう。建築家ウィリアム・G・ウルフのデザインは、モロイのシアター・ロイヤル・コンプレックスをさらに壮大に発展させたものでした。劇場と一体となったホテルには、65室の客室、ビリヤード室、談話室、そして6つのバーが備えられ、来場客をもてなしました。

建設には、鉄鋼272トン、レンガ375万個、輸入大理石、ミントン焼きタイル、スレートなどが使用され、電動式のリフトで屋上の展望台にアクセスできるなど、当時最先端の技術が導入されました。劇場の内部は、エドワード7世時代を象徴する馬蹄形客席で、観客と舞台の距離を近く設計されていました。冷房設備として、小さな滝が設置されていましたが、のちに撤去されています。

建設過程においては、地下水問題による設計変更や、建設費用の支払いを巡る訴訟など、様々な困難がありました。しかし、これらの問題を克服し、当初の予定通りに完成、開業を迎えたのです。開業時の演目は「アリババと40人の泥棒」でしたが、開業日と演目の組み合わせは、興行的に成功とは言えませんでした。

開業後の歴史と改修

開業以来70年間、ヒズ・マジェスティーズ・シアターは、シェイクスピア劇からオペラ、政治集会、ボクシング、映画上映まで、様々なイベントに使用されました。特に、その優れた音響効果は高く評価されていました。第二次世界大戦中は、旅行制限の影響から映画館として主に使用された時期もありました。

その後、幾度かの改修を経てきました。1912年、1948年、1960年には大規模な改修が行われ、舞台裏設備の更新、バルコニー撤去などが実施されています。しかし、1970年代には施設の老朽化が進み、閉鎖の危機に瀕していました。そこで、1977年、西オーストラリア州政府が劇場を購入し、大規模な修復と改修に乗り出しました。

この改修は、3年間にわたって行われ、ホテル部分の分離、客席や舞台の改修、空調設備の導入、そして防音工事などが実施されました。改修後の劇場は、西オーストラリア・オペラと西オーストラリア・バレエの本拠地となり、現在もこれらの団体による定期公演が行われています。改修工事中には、劇場の運営方法をめぐる議論もありましたが、最終的にパース・シアター・トラストが運営を引き継ぎ、1980年に再開されました。客席数は減りましたが、歴史的建造物を保全しながら、現代的な劇場としての機能を備えた姿で生まれ変わったのです。

文化遺産としての価値

ヒズ・マジェスティーズ・シアターは、西オーストラリアの文化遺産として、高い価値を持つ劇場です。1978年には国民的財産として登録され、1994年には州の遺跡建築として永久登録されました。2004年には州の遺産の象徴と認定され、2006年にはスコットランドのアバディーンにある同名の劇場と姉妹提携を結んでいます。オーストラリアで現存する唯一のエドワード王朝時代の劇場として、その歴史的意義は非常に大きいです。

近年の状況と今後の展望

近年、外装の老朽化に伴う修復工事なども行われています。サヴコー社による精密調査の結果、外装の欠陥が発見され、安全性確保のための修復が実施されました。この修復工事では、伝統的な建築技術と最新の技術を組み合わせ、歴史的建造物の保全と安全性の両立を図っています。

ヒズ・マジェスティーズ・シアターは、西オーストラリアの文化と歴史を象徴する劇場であり、今後もその役割を担い続けることでしょう。その壮麗な建築、歴史的価値、そして現代的な機能を備えた姿は、訪れる人々に感動を与え続けるでしょう。

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