ヒトリシズカ (小説)

誉田哲也『ヒトリシズカ』：孤独な魂の軌跡

誉田哲也による『ヒトリシズカ』は、一人の女性、伊東静加の人生を様々な角度から描いた連作短編集です。彼女の8歳から31歳までを切り取った6つの物語は、それぞれ独立していながらも、静加という人物を通して複雑に絡み合い、全体として一つの大きな物語を形成しています。

あらすじ

闇一重

小金井署の木崎は、暴力団構成員射殺事件の捜査に加わることになります。被害者は未成年者に薬物を乱用させていた男で、事件には自殺した女子高生の兄が浮上します。しかし、木崎は現場の状況や容疑者の供述に違和感を覚え、独自の捜査を開始。事件の裏に隠された真実に迫ります。

蛍蜘蛛

西新井署の山岸は、元暴走族メンバー刺殺事件の捜査を担当します。被害者の周辺を捜査するうちに、過去にストーカー被害を訴えていた女性が浮上。事件は意外な展開を見せ、山岸は複雑な感情に苛まれます。

腐屍蝶

探偵の青木は、かつて世話になった伊東から、娘の静加の捜索を依頼されます。手がかりを追ううちに、静加が過去の事件に関わっていた可能性が浮上。青木は危険な闇へと足を踏み入れていきます。

罪時雨

八王子署の伊東は、同棲相手からのDVに悩む女性から相談を受けます。その後、その同棲相手が殺害され、女性の娘である静加が事件を目撃。事件は未解決のまま時が過ぎ、伊東は静加の告白から衝撃の真実を知ることになります。

死舞盃

麻布署の矢部は、不動産管理会社社長宅で発生した銃撃事件の捜査を担当します。事件の背後には、暴力団同士の抗争と、一人の女性の存在が。矢部は事件の真相を追ううちに、自身の過去と向き合うことになります。

独静加

渋谷の漫画喫茶で女性の変死体が発見されます。身元調査の結果、彼女は結婚していることが判明しますが、夫は彼女が別人であると主張。事件の真相を追う刑事たちは、過去の事件と静加の関わりにたどり着きます。

全体を通して

各話は独立した事件を描きながらも、静加という人物を軸に、事件の真相、人間の心の闇、そして孤独といったテーマが深く掘り下げられています。物語が進むにつれて、静加の過去と現在が明らかになり、彼女が抱える心の傷や孤独が浮き彫りになっていきます。読者は、静加の人生を追体験することで、人間の複雑さや社会の暗部について考えさせられるでしょう。

ドラマ化

2012年にはWOWOWでテレビドラマ化され、夏帆が主演を務めました。原作の持つ独特な世界観と、複雑な人間関係を見事に映像化し、高い評価を得ています。ドラマでは、原作とは異なる設定や展開も取り入れられており、原作ファンも楽しめる内容となっています。

『ヒトリシズカ』は、ミステリーとしての面白さはもちろんのこと、人間の心の奥底に潜む孤独や闇を描いた、読み応えのある作品です。ぜひ手に取って、静加の人生を追体験してみてください。

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