ヒメフラスコモ

ヒメフラスコモ (Nitella flexilis)

ヒメフラスコモはシャジクモ目に属する藻類の一種で、その学名はNitella flexilisです。この藻類は、しばしば「ヒメフラスコモ」として知られる他、基変種であるNitella flexilis var. flexilisとも呼ばれています。主に湖沼の深い水域に生育し、特にシャジクモ帯の重要な構成要素となっています。環境省のレッドリストでは、2025年現在、絶滅危惧II類に分類されています。

特徴

ヒメフラスコモは比較的大きな藻類で、通常は20〜50 cmの高さに成長しますが、最大で1 mに達することもあります。節間細胞の直径は1 mm未満で、長さは5〜15 cmと小枝よりも長く、通常は皮層がなく柔らかい性質を持っています。小枝は基本的に1回だけ分枝し、6〜7本の小枝が節部から輪生します。小枝自体は2〜4 cmの長さで細く、最終的に1細胞からなる枝を形成します。これらの枝の先端部分は急激に細くなる特長があります。

ヒメフラスコモは雌雄同株であり、造精器と生卵器が小枝の節部に形成されます。造精器は単生し、側生する生卵器が群生する姿が観察されます。造精器は直径が450〜500 μmであり、球状の外壁を持ち、内部には造精糸が充満しています。生卵器は600〜900 × 500〜750 μmの大きさで、管細胞はトップに向かって膨らむ特性があります。卵胞子は暗赤褐色から黒色で、ほぼ球状の形をしています。

生態

ヒメフラスコモは、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど、全世界に広く分布しています。日本国内でも沖縄県を除く地域から観察されています。湖沼や緩やかな河川、水田などの環境に生育し、特に湖沼の比較的深い場所で群落を形成します。湖沼の浅い部分では水生被子植物が成長し、それより深い場所でヒメフラスコモが群生することが多いです。

また、日本においては弱酸性から弱アルカリ性（pH 6.8-8.8）の水域で生育し、主に初夏から秋にかけて繁茂しますが、深水域においては多年生です。このような適応により、ヒメフラスコモは多様な生息地で発見され、重要な生態的役割を果たしています。

保全状況

近年、ヒメフラスコモは水質の悪化や農業形態の変化により数が減少しています。特に日本では絶滅危惧II類に認定されています。また、世界的にも生育環境の消失や水質の悪化が問題視され、絶滅危惧種とされる地域が増えています。環境省のレッドリストでは、過去のリスト更新で絶滅危惧I類からII類に降格されるなど、その保全状況は厳しいものとなっています。

人間との関わり

ヒメフラスコモはアクアリウムで観賞用に栽培されていることもあり、ここでは「ニテラ・フレクシリス」または単に「ニテラ」という名称で知られます。特に低光量の環境でも生育が可能で、弱酸性の軟水で活発に成長する特性があります。しかし、急激な水質の変化や栄養不足により枯死することもあるため、環境に慣れることが育成のカギとなります。また、装飾用に使われることが少なく、主に魚の産卵床として利用されています。

分類

ヒメフラスコモの変種には、チュウゼンジフラスコモ（Nitella flexilis var. bifurcata）があり、これは小枝がしばしば2回分枝することが特徴です。オウフラスコモ（Nitella flexilis var. longifolia）は、節間細胞が太く、小枝よりも短いことで区別されます。さらに、カラスフラスコモやタチフラスコモなども類似点を持ちながら異なる特長を持つため、分類学的な研究が続けられています。

これらの特性や生態に関する理解を深めることは、ヒメフラスコモの保全や栄養管理にもつながります。

もう一度検索