ヒューマン (デスのアルバム)

ヒューマン (Human) - Death

デスメタルバンド、デス（Death）のディスコグラフィーの中で、『ヒューマン』は特に重要な転換点として位置づけられる作品です。1991年10月22日にリリースされたこの4作目のスタジオアルバムは、当時のデスメタルシーンにおいて、その後のジャンル全体の方向性にも影響を与えるほどの音楽的な進化を示しました。

音楽性の革新

アルバムが提示したサウンドは、以前の作品と比べて格段に技術的で、構成面でも遥かに複雑化していました。従来のデスメタルのアグレッションに、プログレッシブな要素、ジャズやフュージョンの影響すら感じさせるような洗練された演奏技術や複雑なリズム構造が融合。チャック・シュルディナーを中心としたソングライティングは、リフワーク、展開、演奏全てにおいて、新たなレベルに到達しました。このような革新的なアプローチは、テクニカルデスメタルと呼ばれるサブジャンルの確立に貢献し、以降のデスのアルバムすべてにおいてさらに追求・洗練されていきました。

メンバーと制作背景

『ヒューマン』は、ギタリストのポール・マスヴィダル、ドラマーのシーン・レイナート、そしてベーシストのスティーブ・ディジョルジオという、新たに加入したメンバーが初めて参加した作品でもあります。この新しい布陣が、バンドの音楽的な深化に大きく貢献したことは疑いありません。彼らの卓越した演奏技術は、チャック・シュルディナーの複雑な楽曲構造を見事に表現し、アルバムに独特の洗練された感触をもたらしました。

しかし、ベーシストに関しては一時的な変更がありました。レコーディングを終えた後、スティーブ・ディジョルジオはバンドを脱退しました（ただし、次に発表されたアルバム『インディヴィジュアル・ソート・パターンズ』のレコーディングでは再びベースを演奏しています）。アルバムリリース後の1991年から1992年にかけて行われたツアーには、後任としてスコット・カリノが参加しました。アルバムのレコーディング自体も一部複雑で、収録曲「Cosmic Sea」のベースパートのうち、前半部分はカリノが演奏を担い、残りの楽曲、特にベースソロを含むパートはディジョルジオが録音しています。このような変遷も、『ヒューマン』の制作背景における特徴と言えるでしょう。

評価と商業的成功

『ヒューマン』は、リリース以降、世界中の音楽出版物や批評家から一様に高い評価を受けてきました。デスメタル、特にテクニカルデスメタルというジャンルにおける金字塔と見なされることが多く、エクストリームメタル全体においてもその革新性と影響力は広く認められています。音楽評論家のジェフ・ワグナーは、2010年の著書『プログレッシブメタルの平均偏差』の中で、特に『ヒューマン』を非常に影響力のあるエクストリームメタルアルバムとして挙げています。

商業面でも、『ヒューマン』はデスのキャリアの中で最も成功したアルバムとなりました。1995年までにアメリカ合衆国内だけで10万枚を超える販売を記録し、2008年時点では全世界で累計60万部を売り上げています。これはデスの全作品の中で最高の販売実績であり、米国のサウンドスキャンデータでも10万ユニット以上が確認されています。また、ギター演奏の卓越性も高く評価されており、有名な『Guitar World』誌が2006年10月号で選出した「史上最高の100枚のギターアルバム」リストでは、82位にランクインしました。

楽曲クレジット

全楽曲の作詞・作曲は、バンドの創設者であり中心人物であるチャック・シュルディナーが手掛けています。

参加ミュージシャン

ヴォーカル、ギター：チャック・シュルディナー
ギター：ポール・マスヴィダル
ベース：スティーヴ・ディジョルジオ
* ドラムス：シーン・レイナート

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