ヒロイン (河村隆一の曲)

河村隆一 14thシングル「ヒロイン」：孤高のアーティストの決意と、時代を彩る一曲

2009年2月4日、河村隆一はコロムビアミュージックエンタテインメントから14枚目のシングル「ヒロイン」をリリースしました。このシングルは、彼にとってコロムビア在籍期間5年間の集大成にして、最後の作品となりました。

CDには表題曲「ヒロイン」を含む3曲が収録されており、初回限定盤にはミュージックビデオを収録したDVDが付属しています。通常盤には、さらに1曲追加収録されています。

特筆すべきは、表題曲「ヒロイン」の作曲・編曲を、日本の音楽シーンを代表する作曲家である織田哲郎氏が担当している点です。河村隆一が2007年にリリースしたカバーアルバム『evergreen anniversary edition』で織田哲郎氏の楽曲「いつまでも変わらぬ愛を」をカバーしたことがきっかけとなり、この異色のコラボレーションが実現しました。二人の共作は、「Love is…」以来、2作目となります。また、河村隆一自身は作曲者としてクレジットされていません。

「ヒロイン」は、美しいバラードとして仕上がっており、発売後、フジテレビ系情報番組『とくダネ！』で司会を務める小倉智昭氏から「珠玉のバラード」と絶賛されました。しかし、このシングルは、河村隆一のキャリアの中でも異例と言えるほど、プロモーション活動が控えられました。メディア露出はラジオ出演数件にとどまり、その他の活動はほとんどありませんでした。このことについて、河村隆一自身は、2008年末から2009年にかけて行われたカウントダウンライブなどで「もうテレビには出たくない」と発言しています。この発言からも、彼の独立への決意、そして音楽活動に対する独自のスタンスが伺えます。

通常盤にのみ収録されている「誰もかれも騎士（ナイト）」も、織田哲郎氏が作曲・編曲を担当しています。そしてもう一曲、「緑の詩」は2008年北海道洞爺湖サミットの公式テーマソングとして書き下ろされた楽曲です。編曲は葉山拓亮氏が担当しました。この楽曲は、河村隆一がサミット開催前に、当時の内閣官房長官であった町村信孝氏にデモCDを手渡したというエピソードも残っています。歌詞はサミットのテーマに沿った内容で、「環境保全」「緑の星を永遠に」というメッセージが込められています。

初回限定盤に付属するDVDには、「ヒロイン」のプロモーションビデオが収録されています。ミュージックビデオには、女優の佐藤寛子が出演しています。

「ヒロイン」は、河村隆一の音楽キャリアにおける転換期を示す作品と言えるでしょう。商業的な成功という側面だけでなく、アーティストとしての彼の強い意志、そして音楽への純粋な情熱が凝縮された、重要な一曲です。控えめなプロモーション活動の裏側には、音楽そのものへの深いこだわり、そして、自身の進むべき道を明確に示した、彼の覚悟が感じられます。このシングルは、単なる楽曲としてだけでなく、河村隆一のアーティストとしての姿勢を示す象徴的な作品として、これからも長く記憶されることでしょう。

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