ヒロメ

ヒロメ（Undaria undarioides）

ヒロメは、ワカメと同じコンブ科に属する一年生の褐藻類です。ワカメとよく似ていますが、いくつかの点で区別できます。

形態

ヒロメの葉部は、長さ75～100cm程度まで成長します。葉の形は披針形、長楕円形、楕円形など様々で、縁は滑らかであったり、やや波打っていたりしますが、ワカメのように大きく裂けることはありません。葉の中央には、根元の茎から続く明瞭な中肋があります。中肋の両側には多数の水平方向の皺があり、葉の表面は粗く膨らみ、小さな点や毛のようなものが生じます。

茎は長さ3～30cm程度で、根元は円柱形ですが、上部に行くにつれて扁平になり、縁が薄くなって葉につながります。成熟すると、茎の縁に突き出した襞が生じ、それが波打って葉に繋がることもあります。根元には、繊維状の根枝があり、それが数回叉状に分枝して、平らな円錐状の付着器となります。

胞子嚢斑は、葉の中央部分に下から上に向かって形成されます。ワカメのような胞子形成部（メカブ）は形成しません。

分布と生育環境

ヒロメは、本州中部以南、四国、九州の太平洋岸に分布しています。漸深帯の岩の上に生育し、特に湾入した場所に多く見られます。ワカメよりも暖海性を好みます。春から初夏にかけて繁茂します。

近似種との区別

ヒロメはワカメと非常によく似ており、特に若い個体は区別が難しい場合があります。しかし、ヒロメの葉には切れ込みがないこと、そしてワカメのようなメカブを形成しないことで区別できます。また、同じコンブ属のアオワカメは、葉に中肋がないことで区別できます。

利用

ヒロメはワカメと同様に食用とされます。ただし、分布域が限られているため、ワカメほど広く流通してはいません。和歌山県田辺地方では「ヒトハメ」と呼ばれ、地元の人々に親しまれています。ワカメよりも早く、2～3月頃から採取されます。近年では養殖も行われています。

味については、文献によって評価が分かれています。瀬川(1956)は『ワカメほど品質はよくない』と評していますが、新崎(2002)は『食用として良質』と評価しています。地域や個体差によって味が異なるのかもしれません。

参考文献

吉田忠生、『新日本海藻誌 日本産海草類総覧』、(1998)、内田老鶴圃
瀬川宗吉、『原色日本海藻図鑑』、(1956)、保育社
新崎盛敏、『原色新海藻検索図鑑』、(2002)、北隆館
田中次郎、中村庸夫、『日本の海藻 基本284』、(2005)、平凡社
* 南紀生物同好会、『わかやまの生物』、(1979)、帯伊書店

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