ビアンキ・アンソニー

ビアンキ・アンソニー：異国の地で築いた政治家人生

ビアンキ・アンソニー氏（1958年生まれ）は、アメリカ合衆国ニューヨーク出身の日本の政治家です。犬山市議会議員を5期にわたって務め、議長も歴任した経歴を持ちます。彼の歩みは、アメリカでの映画制作、日本の教育現場での経験、そして日本の政治の世界での活躍と、非常に多様性に富んでいます。

ニューヨークのザベリアン高校卒業後、ニューヨーク大学で映画制作を学びました。卒業後はロサンゼルスでテレビ番組制作会社に勤務するも、番組打ち切りによって職を失います。その後、ニューヨーク市役所で働きながら、かねてからの日本への関心を深め、1988年には「ぎふ中部未来博」のホームステイプログラムを通じて日本を訪れました。

1989年には、文部省の外国語指導助手（ALT）プログラムに参加し来日。愛知県で勤務した後、清洲町の中学校教員、ワーグナー大学ELSセンター副学長などを経て、1996年には犬山市役所教育委員会に勤務しました。この間、犬山市独自の英語プログラムの開発にも携わっています。

2000年に日本人女性と結婚し、日本での生活をさらに深くしていく中で、教育委員会の保守的な姿勢に限界を感じます。自身の教育理念を実現するため、2002年には日本国籍を取得。2003年の犬山市議会議員選挙に立候補し、トップ当選を果たしました。

市議会議員として、ビアンキ氏は情報公開を重視した政治活動を行いました。ケーブルテレビでの議会中継や、市のホームページへの議事録掲載を議会で求めるなど、行政の透明性を高めることに尽力しました。

さらに、彼の活動は市政にとどまりません。アメリカ・ニューヨークのザベリアン高校との間で、B.ブリッジズという国際交流プログラムを立ち上げました。音楽や文化交流を軸に、長年にわたって生徒や教職員の相互訪問を推進し、犬山とニューヨークの友好親善に大きく貢献しました。この活動は、ニューヨーク州議会からの表彰も受けています。

2006年には犬山市長選挙に立候補するも落選。その後も市議会議員として活動し、2017年には犬山市議会議長に就任しました。議長在任中には、市民が市政について直接発言できる「市民フリースピーチ制度」を導入。この制度は、マニフェスト大賞を受賞するなど高い評価を得ました。

数々の功績を残したビアンキ氏ですが、犬山国際交流協会を巡る問題で批判にさらされることになります。2017年、協会職員に対する雇い止めや、関係者へのパワハラ行為などが指摘され、市議会調査委員会はビアンキ氏のパワハラと協会役員辞任の間に因果関係があると結論づけました。その後、市議会から厳重注意処分を受け、自身のFacebookで反論するなど、物議を醸しました。

ビアンキ氏は、自身の経験を基にした2冊の著書を発表しています。1冊目は市議会議員としての活動をまとめた『前例より、前進!―青い目の市会議員“奪戦記”』、もう1冊目は市民フリースピーチ制度導入の過程を記した『1人から始める議会改革―市民フリースピーチが議会を変えた!』です。

ビアンキ・アンソニー氏の生涯は、異文化間での葛藤と挑戦、そして大きな成功と失敗を経験した、ドラマチックな物語です。彼の経験は、日本における多文化共生や地方政治の在り方について、多くの示唆を与えてくれます。彼の活動は、今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。

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