ビッカース硬さ

ビッカース硬さ試験：材料の硬さを測る精密な方法

ビッカース硬さ試験は、材料の硬さを評価するための重要な試験方法です。ダイヤモンド製の四角錐圧子を被験材料に押し込み、その際にできる圧痕の面積から硬さを測定します。硬い材料ほど小さな圧痕、柔らかい材料ほど大きな圧痕ができます。この試験方法は、1921年にビッカース社によって考案され、現在ではJIS規格などにも定められており、広く工業分野で利用されています。

測定原理

ビッカース[硬さ]]試験では、対角線が約136度の正四角錐状のダイヤモンド圧子を材料表面に押し込みます。一定の荷重を加えた後、荷重を除去し、残った圧痕の対角線長さを測定します。この対角線長さと加えた荷重から、ビッカース[[硬さ]を算出します。計算式は以下の通りです。

HV = F/S

ここで、Fは試験力(kgfまたはN)、Sは圧痕の表面積(mm²)です。圧痕の形状から、表面積Sは対角線長さdを用いて近似的に求めることができます。

HV ≈ 1.8544 × F/d²

実際の測定では、2つの対角線長さの平均値を用います。HVの単位は一般的にHVと表記されますが、次元としては圧力と同じであるため、Paで表記されることもあります。ただし、圧力と同一視することはできません。

測定値の表記方法

ビッカース硬さは「HV」で表し、その後ろに試験力をkgfで表示します。例えば、試験力1kgfで測定した結果が300HVであれば、「300HV1」と表記します。試験力300gfの場合は「650HV0.3」となります。

微小硬さ測定（マイクロビッカース）

試験力を1kgf以下として行うビッカース硬さ試験をマイクロビッカース試験と呼びます。小さな圧痕しか残らないため、小さな試料や非破壊試験に適しています。特に、薄膜や表面硬化層の硬さ測定に用いられることが多く、例えば窒化処理層の硬さ測定には300gf以下の試験荷重がJIS規格で推奨されています。

試験機と試験片

ビッカース硬さ試験機は、光学顕微鏡にダイヤモンド圧子を取り付けた構造をしています。圧痕の大きさを正確に測定するために、高精度な顕微鏡と堅牢な構造が求められます。近年はCCDカメラを用いてモニタに圧痕の像を表示する機種も普及しています。

信頼できる試験結果を得るためには、試験片の準備も重要です。試験片表面は傷や凹凸が少なく、圧痕の対角線長さの測定に十分な精度が確保されている必要があります。また、試験片の厚みも圧痕の大きさと関連するため、適切な厚さが必要です。

基準片と試験手順

試験機の検証や作業者の技能確認には、硬さ値が既知の基準片を用います。試験手順は、日常検証、試験片のセット、打痕、圧痕の読取りと数値の記録という流れで行われます。通常は一つの試験面に対して複数箇所で測定を行い、隣り合う圧痕の間隔はJIS規格で定められた距離以上を確保します。

硬さの相似則

ビッカース硬さ試験では、硬さの相似則が成り立ちます。同一材料に対し、異なる試験力を用いても、圧痕の形状は相似となり、HV値は一定となります。ただし、表面と内部の硬さが異なる材料（薄膜や表面硬化層など）では、試験力によってHV値が変化します。小さい試験力では表面付近の硬さしか測定されないためです。

試験力と測定値の精度

試験力と測定値の精度には関係があります。試験力が低くなると、圧痕が小さくなり、測定誤差の影響が大きくなります。そのため、低荷重での測定は精度に注意が必要です。

硬さと強度との関係

ビッカース硬さ試験は、材料の強度の推定にも利用できます。特に鉄鋼材料では、ビッカース硬さと降伏強度、疲労強度にはほぼ比例関係があります。近似的に、降伏強度はHV値の約1/3倍、疲労強度はHV値の約1.5倍となります。ただし、HV値が高くなると、この関係は成り立たなくなります。

関連規格

ビッカース硬さ試験に関する規格は、JIS規格やASTM規格などに定められています。JIS規格には、試験方法、試験機の検証、基準片の校正などが規定されています。

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