ビックロ

ビックロ：家電とファッションの融合、その軌跡

ビックロは、かつて東京都新宿区に存在した、家電量販店ビックカメラとカジュアル衣料のユニクロが共同で出店した商業施設です。異業種コラボレーションとして注目を集めましたが、惜しまれつつも2022年にその幕を閉じました。

ビックロ誕生の背景

ビックロは、2012年3月31日に閉店した三越新宿アルコット店の跡地に、ビックカメラが10年間の定期建物賃貸借契約を結び、同年7月5日に『ビックカメラ新宿東口新店』として開店したことが始まりです。その後、ユニクロがテナントとして入居することになり、ビックカメラとユニクロの親会社であるファーストリテイリングが共同で『ビックロ』として店舗運営を行うことを発表しました。2012年9月27日のオープン時には、4000人もの人々が駆けつけ、開店時間が15分繰り上げられるほどの盛況ぶりでした。

家電量販店と衣料品店という異色の組み合わせは、当時の家電業界の状況が背景にありました。エコポイント制度の終了や地上デジタル放送への移行に伴う特需の反動で、家電業界全体が需要不足に陥っていたのです。ビックカメラは、ユニクロの集客力に期待し、新たな顧客層の獲得を目指しました。

ビックロの終焉

三越伊勢丹ホールディングスとの契約が2022年に満了するのを機に、ユニクロは契約を更新せず、ビックロから撤退することを決定しました。ファーストリテイリングは、撤退の理由として、新宿駅周辺の再開発による顧客の動線の変化を挙げています。ユニクロは、新宿南口駅前と新宿三丁目に新たに店舗を構えることで、顧客ニーズの変化に対応していくとしています。一方、ビックカメラは、ビックロ閉店後も引き続き入居し、「ビックカメラ 新宿東口店」として営業を継続しています。

ビックロの店舗構成

ビックロは、新宿三丁目駅に直結した便利な立地にありました。地下4階・地上8階建ての建物のうち、地下1階から地上6階までがビックカメラ、地上2階と3階がユニクロの売り場となっていました。1階は両社の共同運営スペースとして活用され、地下1階には調剤薬局とビックカメラが運営するカフェ、1階には生花店、6階には眼科医院、7階にはGU、屋上にはフットサル場など、多様なテナントが入居していました。

シームレスな店舗作り

ビックロは、単にビックカメラとユニクロが同じ建物に入居しているだけでなく、両ブランドの融合を意識した店舗作りが特徴でした。「素晴らしいゴチャゴチャ感」をコンセプトに、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏がトータルプロデュースを手掛けました。1階の共同売り場をはじめ、各階にはユニクロの機能性衣料である「ヒートテック」の横にビックカメラの暖房器具を置いたり、ユニクロの衣料品を身に着けたマネキン人形にヘッドホンなどの電気製品を持たせるなど、コラボレーションを意識したディスプレイが数多く見られました。

CMとプロモーション

ビックロのオープン時には、テレビ、ラジオ、新聞、鉄道など、さまざまなメディアで大規模な広告展開が行われました。CMソングには、ビックカメラのテーマソングのメロディーに、新たな歌詞を乗せたものが使用され、話題を呼びました。

現在とこれから

ビックロは閉店しましたが、2024年10月25日には、ユニクロがビックロの跡地にユニクロ新宿本店をオープンする予定です。今回はビックカメラとの協業店舗ではなく、ユニクロの単独店舗（グローバル旗艦店）としての開業を予定しています。かつて異業種コラボレーションで話題を呼んだビックロの跡地で、ユニクロがどのような新たな展開を見せるのか、注目が集まっています。

ビックロは短期間の営業でしたが、家電とファッションの融合という斬新なコンセプトで、多くの人々に強い印象を与えました。その挑戦は、小売業界における新たな可能性を示唆するものとして、記憶されることでしょう。

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