ビデオシアター

ビデオシアター概要

ビデオシアターは1983年から2006年の間に存在した映画館形態で、高輝度ビデオプロジェクターを用いて作品を上映していました。このシアターの最大の特徴は、映写室が不要で、ビデオプロジェクターが天井に吊り下げられ、その映像を観客席に投影するというスタイルです。客席数は一般的に100席前後で、主に東宝、松竹、東映、日本ヘラルドなどの有名配給会社が映画を供給していました。さらに、時折Jリーグ等のスポーツ中継を上映することもあり、当時の名残として多様なコンテンツが楽しめました。

利点と欠点

ビデオシアターの利点としては、まず、従来の35mmフィルムに比べて設置が容易である点が挙げられます。上映に必要な映写室を必要としないため、天井が低い建物でも映画館を開設可能となり、導入コストも比較的安価でした。さらに、ビデオテープを使うことで操作が簡易となり、専門的な訓練なしでもスムーズに運営できたことも、大きな魅力でした。

一方で、欠点も存在しました。フィルム上映と比べるとプロジェクターの光源の強度が劣るため、スクリーンのサイズには制約がありました。このため、小さめのスクリーンでの上映が主となり、画像もフィルムに比べると粗くなりがちでした。

歴史の流れ

8903年にソニーがビデオシアターの一つの形態であるソニー・シネマチックを発表し、1984年から導入が始まりました。その第一号はイトーヨーカ堂船橋店内に設置されたコミュニティシアター船橋でした。これを皮切りに、ビデオシアターは商業施設の集客装置として広がっていきました。特に、多くはスーパーマーケットや百貨店内に併設される形で新たに設立され、1992年には新潟万代東宝などのシアターが開館しています。

この流れの中で、流通関係の企業が多くのビデオシアターを開設したという背景も見逃せません。ビデオシアターの普及は、商業施設への集客の一手段としての役割を担っていました。その後、1993年に税制が優遇されることも後押しとなり、全盛期には約80スクリーンを誇るまでに成長しました。

マルチプレックスへの移行

しかし、1993年以降、マルチプレックスの時代が到来し、従来のビデオシアターは停滞を余儀なくされました。多くの商業施設がビデオシアターではなく、より高品質なシネマコンプレックスを選ぶ傾向が強まったためです。1990年代後半には、新しいビデオシアターの設立例もありましたが、市場はほとんど拡大しませんでした。それでも、いくつかのシアターは当時の技術であるハイビジョン化を見込み続けていました。

ビデオシアター終了

最終的に2004年にソニー・シネマチックが撤退を発表し、その影響を受けてビデオシアターの多くが営業を停止しました。良好な動員数を誇っていた劇場もあったものの、2006年には配給を停止し、存在していたビデオシアターは大半が閉館となりました。残された劇場では、35mmフィルム映写機を使った上映に切り替えたケースもあるものの、コストの面で敷居が高く、最終的にはそのほとんどが閉館に至りました。

規格

ビデオシアターで用いられる映写規格には、主に二つの方法が存在しました。

1. ソニー・シネマチック：1983年にソニーが発表し、ノンインターレース方式で上映を行うためのシステムで、東宝や東映などが多くの作品を配給しました。
2. CINEMA21：1990年に松下電器と松竹が共同で開発し、こちらは高画質が特徴ですが、導入コストが高いことから多少の難航が見られました。

結論

ビデオシアターは短い期間であったものの、映画の上映スタイルに新しい風を吹きこみ、商業施設と結びついた形態として多くの人々に愛されました。その後の映像技術の発展に伴う変化には対応できず、現代のシアター環境に取って代わられてしまったものの、その特異な文化と歴史は今後も記憶され続けることでしょう。

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