ビリオネア・ボーイズ・クラブ

ビリオネア・ボーイズ・クラブ（BBC）事件の真相

1983年、ジョセフ・ヘンリー・ガムスキー、別名ジョー・ハントによって南カリフォルニアで設立されたビリオネア・ボーイズ・クラブ（Billionaire Boys Club、BBC）。当初は、ハントがシカゴで通っていたレストラン「ボンベイ・バイシクル・クラブ」の頭文字をとった単なる「BBC」という名称でした。しかし、裕福な家庭の少年たちで構成される組織として知られるようになり、「億万長者の少年のクラブ」というジョーク混じりの通称で呼ばれるようになりました。

クラブの成り立ちと犯罪への転落

BBCは、当初、ハーバード・スクール・フォー・ボーイズ（現ハーバード・ウェストレイク・スクール）の生徒たちを中心に構成されていました。しかし、クラブの運営は、投資家から資金を集め、それをクラブメンバーの豪遊に費やすという、いわゆるポンジ・スキームの手法で行われていました。1984年になると資金が枯渇し、ハントたちは資金調達のために、ロン・レヴィンという詐欺師を殺害。さらに、クラブメンバーのレザ・エスラミニアの父親、ヘダーヤト・エスラミニアを殺害する事件にまで発展しました。

殺人事件と裁判

一連の殺人事件を受けて捜査が開始されると、クラブのナンバー2であったディーン・カーニーが検察側の証人に転じ、免責を求めました。ハントとクラブの保安監督であるジム・ピットマンは、ロン・レヴィン殺害の罪で起訴されました。また、ハント、ピットマン、カーニー（免責前）、アーベン・ドスティ、レザ・エスラミニアは、ヘダーヤト・エスラミニア殺害の罪で起訴されました。ただし、ヘダーヤトは実際にはほぼ無一文であったことが後に判明しました。

ロン・レヴィン殺害事件の裁判で、1987年、ハントは有罪判決を受け、仮釈放なしの終身刑を宣告されました。ピットマンも裁判の末、有罪となり収監されました。

ヘダーヤト・エスラミニア殺害事件の裁判は北カリフォルニアで行われました。カーニーの証言により、ドスティとレザ・エスラミニアは共に有罪判決を受け、仮釈放のない終身刑が宣告されました。一方、ハントとピットマンの裁判は、レヴィン殺害事件の裁判のために延期され、ハントの裁判は1992年までずれ込みました。この裁判でハントは自身で弁護を担当し、エスラミニアを殺害したのはカーニーだと主張。結果、陪審員はハントの免訴を支持しました。ハントは、カリフォルニアの裁判史上、死刑裁判事件で自身の弁護人となり死刑を免れた唯一の人物となりました。検察側は、ハントがすでにレヴィン殺害の罪で終身刑を受けていたこともあり、ハントとピットマンに対するエスラミニア殺害の告発を却下しました。

事件後の展開

1993年、ピットマンはテレビ番組でレヴィン殺害に関与したことを告白しましたが、二重処罰禁止の原則により裁判にはかけられませんでした。ハントは再審を求めましたが、1996年に拒否。ピットマンは1997年に腎不全で死去。ドスティとレザ・エスラミニアの判決は覆りませんでした。

2004年、ハントは人身保護令状の却下が取り消されたことを機に、殺人罪を覆すための取り組みを再開。2008年までに、連邦裁判所はハントに追加の書類を提供していますが、その後の進展は不明です。

ポップカルチャーへの影響

BBC事件は、テレビドラマや映画などのポップカルチャーにも大きな影響を与えました。

1987年には、NBCでテレビミニシリーズ『ビリオネア・クラブ』が放送され、ハントをジャド・ネルソンが演じました。このドラマでは、事件の背景や登場人物たちの関係が詳細に描かれました。

ハントは、テレビドラマ『ロー&オーダー』やそのイギリス版『Law & Order: UK』にも、事件をモチーフとしたキャラクターとして登場しています。また、スー・ホートンやランドール・サリバンによって、BBC事件をテーマにした書籍も出版されています。

2018年には、映画『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』が公開され、アンセル・エルゴートがハントを演じました。この映画では、クラブの設立から殺人事件に至るまでの過程が、よりドラマチックに描かれています。

まとめ

ビリオネア・ボーイズ・クラブ事件は、富裕層の若者たちの欲望、詐欺、そして殺人という、衝撃的な要素が絡み合った事件でした。この事件は、アメリカ社会に大きな衝撃を与え、今もなお、様々な形で語り継がれています。

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