ピアノ三重奏曲第2番 (シューマン)

シューマン：ピアノ三重奏曲第2番 ヘ長調 作品80

ロベルト・シューマンが手がけたピアノ三重奏曲第2番ヘ長調作品80は、彼が前作にあたる第1番作品63を完成させた直後から作曲に取りかかり、1847年10月25日に書き上げられました（シューマンは自身の家計簿に11月1日付で完成を記しています）。

この作品は、劇的で力強い性格を持つ第1番とは趣を異にし、より穏やかで歌謡的な側面が強調されています。シューマン自身も、この第2番について「より親しみやすく、聴き手に直接訴えかける印象を持つ」と語っています。音楽的な特徴としては、当時の常識にとらわれない実験的な和声が多く用いられている点や、古典的なソナタ形式などの枠組みに対して、より自由なアプローチが見られる点が挙げられます。

完成後、作品にはいくつかの修正が加えられ、1850年に出版されました。公式な初演は、その出版と同年の1850年2月22日、音楽の都ライプツィヒにあるゲヴァントハウスにて行われています。

楽曲の構成

このピアノ三重奏曲は、全部で4つの楽章から構成されており、全曲を通して演奏するのに要する時間は概ね29分程度です。

第1楽章：極めて生き生きと（Sehr lebhaft）
ソナタ形式で書かれた開始楽章です。躍動感あふれる主要主題と、それに対比される静かで叙情的な副主題が現れますが、興味深いことにこれらは共通の音楽的素材から派生しています。展開部に入るとすぐに、シューマンの有名な歌曲集『リーダークライス』作品39の中から、特に美しい第2曲「私の麗しき面影」の旋律が引用される部分が現れ、聴き手の心を捉えます。

第2楽章：心の底から表情を表すように（Mit innigem Ausdruck）
変ニ長調の調性で書かれた、深く内省的な楽章です。情感豊かな歌のような旋律が奏でられ、全体を通してカノンのような対位法的な書法が効果的に用いられています。

第3楽章：適度な動きで（In mässiger Bewegung）
変ロ短調の、どこか中間楽章のような性格を持つ楽章です。適度なテンポで進み、第2楽章と同様に、ここでもカノン風の対位法的な技法が音楽を織り上げています。

第4楽章：速すぎず（Nicht zu rasch）
ヘ長調に回帰する終楽章です。楽章の冒頭で提示されるいくつかの短い動機群が、楽章全体の音楽的素材として展開されていきます。特に展開部では、これらの動機を用いた巧妙な対位法的な処理が施され、楽曲を締めくくります。

楽章構成

1. Sehr lebhaft (極めて生き生きと)
2. Mit innigem Ausdruck (心の底から表情を表すように)
3. In mässiger Bewegung (適度な動きで)
4. Nicht zu rasch (速すぎず)

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