ピエール・アンドレ・ラトレイユ

ピエール・アンドレ・ラトレイユ（Pierre André Latreille, 1762年11月20日 - 1833年2月6日）は、フランスの昆虫学者であり、その業績は近代昆虫学の発展に大きく貢献しました。彼の生涯は、科学への情熱と困難な時代を生き抜く強さを示しています。

生涯

ラトレイユは、ブリーヴ＝ラ＝ガイヤルドで、非嫡出子として生まれました。母親の情報は不明です。鉱物学者であるアユイ神父の養子となり、神父になるための教育を受けました。ブリーヴとパリで学び、1780年にリモージュの神学校に入学。1786年にはブリーヴの助祭となりました。しかし、彼は昆虫学への情熱を抑えきれず、1788年に再びパリへ出て、アリやハチに関する論文を発表し、科学界の注目を集めました。

フランス革命が勃発し、カトリック教会への弾圧が始まると、ラトレイユはパリを追放され、ボルドーで収監されます。しかし、博物学者で軍人のジャン・バティスト・ボリ・ド・サン＝ヴァンサンらの尽力により解放されました。1796年には、昆虫の種に関する著書『Précis des caractères génériques des insectes, disposés dans un ordre naturel』を出版し、その才能を世に示しました。

1798年、新たに設立された自然史博物館で昆虫標本を分類する職に任命され、1814年にはフランス科学アカデミーの会員に選出。1821年にはレジオンドヌール勲章を受章しました。また、アルフォールの獣医学校で動物学の教授を務め、ラマルクの死後、自然史博物館の動物学部門が細分化された際には、甲殻類、クモ、昆虫の分野の教授に任命されました。

1832年には、パリにフランス昆虫学会（Société entomologique de France）を設立し、初代会長に就任。その生涯を閉じるまで会長職を務めました。ラトレイユは、生涯を通じて著作活動を続け、近代的な昆虫学の基礎を築いた人物として、その名を歴史に刻んでいます。

彼は、単に新種の昆虫を記載するだけでなく、分類体系を構築し、新しい属や科を導入するなど、分類学の発展に大きく貢献しました。その功績は、ミズヒキガニ科（Latreillia）など、多くの生物の学名に彼の名前が献名されていることからも明らかです。

著作

ラトレイユは、多くの著作を出版しました。以下はその一部です。

『Précis des caractères génériques des insectes disposés dans un ordre naturel』（1796年）
『Histoire naturelle des reptiles』（1801年）シャルル＝ニコラ＝シジスベール・ソンニーニ・ド・マノンクールとの共著。
『Histoire naturelle générale et particulière des crustacés et insectes』（1802-1805年）ビュフォンの『博物誌』(ソンニーニ版)の一部として出版。
『Genera crustaceorum et insectorum, secundum ordinem naturalem et familias disposita』（1806-1807年）
『Considérations sur l'ordre naturel des animaux composant les classes des crustacés, des arachnides, et des insectes』（1810年）
『Familles naturelles du règne animal, exposés succinctement et dans un ordre analytique』（1825年）
『Cours d'entomologie』（1831年、第一巻のみ出版）

これらの著作は、当時の昆虫学研究に大きな影響を与え、分類学における彼の革新的なアプローチは、後世の研究者たちに受け継がれています。

参考文献

Claude Dupuis: Pierre André Latreille (1762–1833): the foremost entomologist of his time. In: Annual Review of Entomology. 19, 1974, doi:10.1146/annurev.en.19.010174.000245.

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