ピン (チェス)

チェスにおけるピン：駒を釘付けにする戦術

チェスにおけるピンとは、相手の駒が動けないように「釘付け」にした状態を指します。これはチェスの最も基本的な戦術の一つであり、戦局を有利に進める上で非常に重要です。

ピンの基本

ピンは、クイーン、ルーク、ビショップといった直線的に動ける駒によって行われます。これらの駒で、敵のキングやクイーンなど価値の高い駒を間接的に攻撃し、その間にある守りの駒を動けないように制限します。この状態を「ピンされた」と表現します。

ピンに関する格言

チェスの世界には、ピンに関する格言がいくつか存在します。

「ピンは剣より強し。」 - Fred Reinfeld（アメリカの著名なチェス作家）
「ピンされた駒の防衛力は、単なる幻想に過ぎない。」 - アロン・ニムゾヴィッチ

これらの格言は、ピンが非常に強力な戦術であることを示唆しています。

チェスの駒の価値

ピンを理解するためには、チェスの駒の価値を理解しておく必要があります。一般的に、駒の価値は以下のようになります。

ポーン：1
ナイト：3
ビショップ：3
ルーク：5
クイーン：9

キングはゲームに不可欠な駒であり、価値は無限大です。ただし、これらの価値は局面によって変動することがあります。

ピンを利用した攻撃

ピンは、相手の駒の動きを制限するだけでなく、攻撃の起点となることもあります。ピンを利用することで、通常では予想もつかないような攻撃を繰り出すことが可能です。

例

図05：黒の駒が白クイーンにピンされているため、黒は白クイーンを取ることができません。
図07：黒が白ルークを取ると、自分のクイーンが取られてしまうため、黒は白ルークを取ることができません。

ピンと串刺し（スキュア）の違い

ピンと似た戦術に串刺し（スキュア）があります。これらの違いは、重要な駒が利き筋の前面にあるか背後にあるかによって決まります。

ピン: 重要な駒が間接的に攻撃されており、守りの駒を動けなくすることが目的です。
串刺し（スキュア）: 重要な駒が直接攻撃されており、背後の駒を取ることが目的です。

ピンの解消方法（アンピン）

ピンは、適切な対処をすることで解消することができます。以下は、ピンの解消方法の一例です。

図12：黒のナイトが白ビショップにピンされている状態。
対処例(1)：4...Bd7 ピンしている駒と同じラインに他の駒を配置することでピンを解消します。
対処例(2)：4...a6 5.Bxc6 bxc6 ピンしている駒を交換してピンを解消します。
対処例(3)：4...a6 5.Ba4 b5 ピンしている駒を他の場所に移動させます。

ピンに関する用語

ピンには、以下の2つの種類があります。

絶対ピン: 敵のキングを的としてピンする場合。ピンを外さない限り守りの駒は絶対に動かすことができません。（図14）
相対ピン: キング以外の駒を的としてピンする場合。動くことは可能ですが、動かすと背後の駒が取られてしまうため、実質的に動きが制限されます。（図16）

クロス・ピン

複数のピンが重なり、双方向の攻撃となっているものを「クロス・ピン」と呼びます。これは非常に強力な戦術で、相手の駒を完全に封じ込めることができます。

ピンの応用

ピンは、チェスの序盤、中盤、終盤問わず、さまざまな場面で活用されます。他の戦術（串刺し、フォークなど）と組み合わせることで、非常に効果的な攻撃を仕掛けることができます。

ピンの注意点

ピンは、相手の駒の動きを制限する強力な戦術ですが、状況によっては、ピンを利用した罠にはまることもあります。常に全体的な状況を把握し、慎重に判断することが重要です。

名称

1980年代以前のいくつかの日本語書籍では、ピンを「ピン・アップ」と表記しているものもあります。

まとめ

ピンは、チェスの基本でありながら非常に強力な戦術です。ピンのメカニズムを理解し、実戦で効果的に活用することで、チェスの腕前を大きく向上させることができます。この知識を活用して、より深いチェスの世界を探求してください。

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