ピース (ホッキョクグマ)

ピース：人工哺育で育ったホッキョクグマの物語

ピースは、1999年12月2日に愛媛県立とべ動物園で誕生したメスのホッキョクグマです。彼女は日本で初めて人工哺育に成功したクマとして、広く知られる存在です。テレビ番組や書籍などで紹介され、現在でもとべ動物園の人気者となっています。

誕生と育成の背景

ピースは、父親の「パール」と母親の「バリーバ」のもとに誕生しました。父親のパールは1988年にハンガリーから来日し、母親のバリーバは1990年にデンマークで生まれ、スイスで育てられた後、1997年に日本に移住しました。バリーバは初めての出産で、他の子グマがバリーバによる噛み傷で早々に亡くなる中、ピースは無事でしたが、バリーバは育児を放棄しました。そのため、飼育員の高市敦広さんの強い要望で、ピースは人工的に育てられることになりました。

人工哺育の挑戦

当時、ホッキョクグマの人工哺育は難しいとされており、国内の生存記録は104日間でした。しかし、高市さんはその限界を超えるべく、ピースを自宅に連れ帰り、24時間体制で育てました。この過程で、高市の家族も協力し、ピースに対する愛情と慎重さを持ちながらお世話をしました。ピースは無事に成長し、体重が15kgを超えた時には、夜間もクマ舎で飼育されるようになりました。

成長と健康問題

ピースは、155日齢で完全に離乳し、その後も順調に成長を続けました。生後10ヶ月の時には73.2kg、3年後には100kgを超える成獣へと成長しました。成長過程では、3歳からてんかんを発症し、7歳で臍ヘルニアの手術を受けるなどの健康問題もありましたが、それにも関わらず多くの人々に愛されています。

メディアでの紹介

ピースは多くのテレビ番組にも取り上げられており、以下のような特集が放送されました：

• - NHK『にんげんドキュメント・ピース5歳 ～日本初ホッキョクグマ哺育物語～』（2005年1月）
• - NHK『ピース　まもなく10歳』（2009年11月）
• - NHK『しろくまピース20歳〜家族と歩んだ'いのち'の軌跡〜』（2020年1月）

また、彼女の成長を記録したDVDや書籍も数多く出版されています。特に、高市さんと平野敦子さんが共著で書いた『人に育てられたシロクマ・ピース』は多くのファンに読まれています。

ピースの現在

2022年現在、ピースは22歳を迎えており、人工哺育の生存記録をさらに更新中です。彼女は成長したクマとしてとべ動物園の一員であり、訪れる多くの人々に愛され続けている存在です。高市さんを親として認識し、近づく姿は、彼女の成長過程と強い絆を物語っています。今後も、ピースの活躍を温かく見守り続けていきたいものです。

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