ピーターソン国際経済研究所

ピーターソン国際経済研究所（PIIE）について

ピーターソン国際経済研究所（The Peterson Institute for International Economics 、PIIE）は、ワシントンD.C.に拠点を置く、国際経済学に特化したアメリカ合衆国の有力なシンクタンクです。以前は国際経済研究所（IIE）として知られていましたが、1981年にC.フレッド・バーグステンによって設立され、現在はアダム S. ポーゼンが所長を務めています。

歴史

PIIEの設立は、ドイツ・マルシャル基金（GMF）からの提案がきっかけでした。GMFは、国際経済の重要性が増していることを認識し、その分野に特化した研究機関の設立をバーグステンに依頼しました。1970年代のニクソン・ショック、石油危機、G5サミットの開催などが、PIIE設立の背景となりました。GMFからの資金提供に加え、ピーターG.ピーターソンが初代会長に就任し、アンソニー・M・ソロモン、リチャード・N・クーパーといった専門家が参画しました。

1980年代から1990年代にかけて、PIIEは国際的な評価を高め、ワシントンD.C.を代表するシンクタンクの一つとなりました。フォード財団からの大型助成金もPIIEの発展を支えました。1990年代には、寄付基金教授職が設けられ、ゼネラル・エレクトリックとJPモルガンの元CEOに敬意を表した役職が設置されました。2001年には、現在のマサチューセッツ・アベニューの建物に移転し、2006年には25周年を記念して、ピーターG.ピーターソンの貢献を称え、研究所名が変更されました。2013年には、アダム S. ポーゼンが所長に就任し、2018年にはマイケル A. ピーターソンが会長に就任しました。研究所の年間予算は約1200万から1300万ドルで、財団、企業、個人からの寄付、出版物からの収入によって運営されています。

研究分野

PIIEは、幅広い分野で国際経済に関する研究を行っています。

債務と開発：腐敗、債務救済、対外援助、技術支援、途上国の技術、移行経済、世界銀行、地域開発銀行などを扱います。
グローバリゼーション：グローバリゼーションの政治、労働、環境、移民など、グローバリゼーションがもたらす問題と影響を研究します。
国際金融/マクロ経済学：為替相場制度、金融政策、金融、投資、債務、世界金融危機、国際通貨基金、新経済と生産性、世界経済などを分析します。
国際貿易と投資：競争政策、企業統治、電子商取引、経済制裁、エネルギー、外国直接投資、知的財産権、地域貿易協定、サービス、税制、WTOなどの国際機関について研究します。
米国の経済政策：経済制裁、対外援助、貿易紛争、貿易促進権限、米国の金融・財政政策、米国の貿易政策などを扱います。

2017年には、税制改革に関する議論において、PIIEはトランプ政権による税法改正案を分析し、税制の抜け穴を塞がない限り、財政赤字が増大する可能性を指摘しました。

建物

2001年、PIIEはマサチューセッツ・アベニュー1750番地の新築された建物に移転しました。この建物は、ブルッキングス研究所やカーネギー国際平和基金などの近隣に位置し、ジェームズ・フォン・クレンペラーによって設計されました。会議センターはC.フレッド・バーグステンに、彫刻庭園はアンソニーM.ソロモンにちなんで名付けられました。建物内には、ステファン・シュミハイニー、ジョアン・ミロ、エリザベスマレーなどの芸術作品が展示されています。この建物は、建築賞を受賞しており、スチュアート・アイゼンスタットは「国際経済学にとって、ルースがヤンキースタジアムを建てた家が野球であった」と評しました。

批判

PIIEは、その政策提言や研究内容について批判を受けることもあります。ニューヨークタイムズの意見記事では、PIIEの新しい建物が「チーム・グローバリゼーションおよび自由貿易応援団のロッカールーム」と評されました。この記事では、自由貿易には勝者と敗者が存在し、敗者への配慮が不足していることが指摘されました。また、ファーウェイやロニー・チャンからの寄付についても、批判的な意見があります。

著名な研究者

PIIEには、著名な研究者が多数在籍しています。

アダム S. ポーゼン（所長）
C.フレッド・バーグステン（名誉所長）
オリヴィエ・ブランチャード
マーカス・ブルナーマイヤー

過去には、マイケル・ムッサ、カーメン・ラインハート、ダニ・ロドリックなどもPIIEで研究を行っていました。ジョン・ウィリアムソンは、PIIE在籍中に「ワシントン・コンセンサス」という用語を作り出しました。

外部リンク

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