ピーター・ガブリエル II

ピーター・ガブリエルがソロアーティストとして発表したセカンドアルバムは、前作と同様に『Peter Gabriel』というセルフタイトルが冠されました。このため、区別のために『Peter Gabriel II』と呼ばれたり、アルバムカバーのデザインを手がけたヒプノシスにちなんで『Scratch』（引っかき傷）という愛称で広く知られています。

プロデュースと位置づけ

本作のプロデュースは、プログレッシブ・ロック界の巨匠であり、キング・クリムゾンのリーダーとしても名高いロバート・フリップが担当しました。フリップは自身のソロアルバム『エクスポージャー』（1979年）、ダリル・ホールのソロ作『セイクレッド・ソングス』（1980年）、そして本作を含む3作品を、後に彼自身が『MOR (More Of Middle) 3部作』と呼ぶ、ある種の連作として位置づけています。このことから、フリップの音楽的なアプローチや哲学が、このアルバムのサウンドに深く影響を与えていることがうかがえます。

多彩な収録曲

アルバムは全11曲で構成されています。ピーター・ガブリエルが単独で作曲・作詞を手がけた楽曲が中心ですが、「マザー・オブ・ヴァイオレンス」では当時の妻であったジル・ガブリエルと、「エクスポージャー」ではプロデューサーであるロバート・フリップと共作しています。収録曲は以下の通りです。

オン・ジ・エア
D.I.Y.
マザー・オブ・ヴァイオレンス
ア・ワンダフル・デイ・イン・ア・ワン・ウェイ・ワールド
ホワイト・シャドウ
インディゴ
アニマル・マジック
エクスポージャー
フロットサム・アンド・ジェットサム
パースペクティヴ（旧邦題：透視力）
* ホーム・スウィート・ホーム

これらの楽曲は、ガブリエルの内省的な側面からより実験的なアプローチまで、多様な音楽性を含んでいます。

サポートメンバー

本作には、ピーター・ガブリエルのボーカルに加え、彼のソロキャリアを初期から支えることになる実力派ミュージシャンたちが参加しています。ガブリエル自身もボーカルの他に、ハモンドオルガン、ピアノ、シンセサイザーを演奏。

プロデューサーであるロバート・フリップは、ギターやアコースティックギターでの演奏に加え、自身が生み出した音響技術「フリッパートロニクス」を使用し、アルバムに独特のテクスチャを与えています。

ベースを担当したのは、後のピーター・ガブリエルバンドに不可欠な存在となるトニー・レヴィンです。彼は通常のベースだけでなく、チャップマン・スティックやストリングベースも操り、さらにリコーダーのアレンジメントやバック・ボーカルでも貢献するなど、その多才ぶりを発揮しています。

キーボード奏者としては、ロイ・ビタンとトッド・コクランが参加し、楽曲に彩りを加えています。ドラムはジェリー・マロッタがほぼ全ての楽曲で力強いリズムを提供し、バック・ボーカルも兼任しました。

シド・マッギニスはエレクトリックギター、アコースティックギター、スティールギター、マンドリンと多岐にわたる弦楽器を演奏し、バック・ボーカルでも参加。ティム・カペロはサクソフォーン、ジョージ・マージはリコーダーで管楽器の音色を添えています。また、ジョン・ティムスによる「インセクツ」というユニークなクレジットも見られます。

これらの個性豊かなミュージシャンたちの演奏と、ロバート・フリップの実験的なプロデュースによって、『Peter Gabriel II (Scratch)』は前作とは異なる、よりエッジの効いた、独特のサウンドを持つ作品に仕上がっています。ピーター・ガブリエルのソロアーティストとしての探求心を示す、重要な一枚と言えるでしょう。

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