ピーター・ジェニングス

ピーター・チャールズ・ジェニングス（Peter Charles Jennings、1938年7月29日 - 2005年8月7日）は、アメリカ合衆国の著名なニュースキャスターであり、1960年代から2000年代にかけてABCネットワークのニュースアンカーとして活躍しました。

生い立ちと初期のキャリア

カナダのトロントで生まれたジェニングスは、父親がカナダ放送協会（CBC）のアナウンサー（後に副社長）であった影響もあり、幼い頃からメディアに触れる機会が多くありました。CTVでラジオニュースの手伝いを始めたことがきっかけで、CTV初のテレビニュースキャスターに選ばれ、そのキャリアをスタートさせました。

ABCニュースへの移籍と挫折

1964年のアメリカ大統領選挙の取材中、ジェニングスの才能がABCニュース幹部の目に留まり、ABCに移籍することになります。当時、低迷していたニュース部門の活性化を図るABCは、若く容姿端麗なジェニングスに期待をかけ、1965年に彼を夕方のニュース番組「Jennings with the News」のキャスターに抜擢しました。しかし、26歳という若さ、高校中退という最終学歴、そしてカナダ訛りの英語が災いし、視聴率は伸び悩みました。CBSのウォルター・クロンカイトやNBCのチェット・ハントリー、デヴィッド・ブリンクリーといった著名なアンカーたちに及ばず、3年も経たずに番組を降板することとなりました。

海外での経験と「World News Tonight」

1970年代、ジェニングスは海外での取材活動に力を入れ、アメリカのテレビニュース初となる中東支局の開設に携わりました。1972年のミュンヘンオリンピック事件では、ABCがオリンピックを放送していたこともあり、事件現場からいち早く事件の模様を伝えました。海外での豊富な取材経験は、彼の報道に対する考え方を大きく shaped と言われています。

その後、1978年から「World News Tonight」のアンカーを務め、1983年からは単独アンカーとして2005年4月までその任を務めました。

晩年と死

2005年4月5日、ジェニングスは自身が肺癌を患っていることを公表し、療養のために休暇を取りました。しかし、同年8月7日、ニューヨークの自宅で67歳で死去しました。彼は生涯で4度の結婚を経験し、2人の子供がいました。

アメリカ同時多発テロ事件とその後

アメリカ同時多発テロ事件の際、アメリカ全体が保守・愛国主義に傾倒する中で、ジェニングスは冷静な報道姿勢を貫きました。しかし、その姿勢が「ピーターはカナダ人だから他人事のように報道している」という批判を招き、バッシングの対象となりました。この出来事がきっかけとなり、彼はアメリカに帰化しました。また、1980年代から禁煙していたものの、バッシングによるストレスから喫煙を再開し、それが肺癌発症の原因になったのではないかという噂も流れました。

ピーター・ジェニングスは、その冷静かつ客観的な報道姿勢で多くの人々に影響を与えた、伝説的なニュースキャスターとして記憶されています。

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