ピーター・フォーサイス

ピーター・テイラー・フォーサイス

イギリスの神学者、牧師であるピーター・テイラー・フォーサイス（Peter Taylor Forsyth, 1848年5月12日 - 1921年11月11日）は、20世紀のキリスト教神学に顕著な足跡を残した人物です。彼は、しばしばカール・バルトが登場する以前の「バルト」に例えられ、その後の新正統主義神学の形成に多大な影響を与えたと評価されています。また、その影響はイギリス国内にとどまらず、日本の神学にも及び、特に神学者である高倉徳太郎は彼から大きな示唆を受けました。

生涯

フォーサイスは1848年、スコットランドのアバディーンに、5人兄弟の長男として生を受けました。父アイザック・フォーサイスは配本業や郵便配達で生計を立てる傍ら、ブラック・フライアーズ街会衆派教会の執事を務めていました。母エルスペット・マクファーソンは裕福な靴商であったピーター・テイラー家で家政婦として働いており、彼女の両親であるピーター・テイラーの名がフォーサイスに与えられました。テイラーは亡くなった後、フォーサイス夫妻に大きな屋敷を残しています。

勉学においては、1864年にアバディーン大学に入学し、1869年に優秀な成績で卒業。その後2年間、母校で人文学部の助手として古典を教えています。1872年には、説教者となるべくドイツに渡り、ゲッティンゲン大学で著名な神学者アルブレヒト・リッチュルに師事しました。この時の学びは彼の神学思想に終生にわたる影響を与えることになります。ドイツからの帰国後、ロンドン近郊のハンプステッドにあるハックニー神学大学に編入しますが、健康上の理由から1874年に中途退学を余儀なくされました。

その後、彼は各地の会衆派教会で牧師としての奉仕を開始します。1876年からヨークシャー・シプリー、1880年からはロンドンのハックニーにある聖トマス・スクエア教会、1885年からはマンチェスター北部のチーサム・ヒル教会、1888年からはレスターのクラレンドン・パーク教会、そして1894年からはケンブリッジのエマニュエル教会で、それぞれの教会の牧会を担いました。1901年には、かつて学んだハックニー神学大学の学長に就任し、ロンドンでその生涯を終える1921年まで、大学の運営と次世代を担う神学生たちの教育訓練に献身しました。多忙な日々を送りながらも、彼は精力的に執筆活動を行い、生涯で17冊もの重要な著作を発表しています。

思想の変遷

フォーサイスの神学思想は、彼の生涯の中で変化を遂げました。初期においては、自らを自由主義神学者と位置づけていましたが、次第に内面的な回心を経験し、伝統的なキリスト教信仰へと立ち戻るようになります。この転換期を経て、彼はかつて自らが傾倒していた自由主義神学を批判する立場を明確に打ち出すようになりました。

主要な著作

彼の代表的な著作には以下のようなものがあります。

• - 『積極的説教と近代精神』
• - 『イエス・キリストの人格と位置』
• - 『十字架の決定性』
• - 『キリストの働き』
• - 『信仰と自由と将来』
• - 『教会と国家における神学』
• - 『神の義認』
• - 『祈りの精神』
• - 『教会と聖礼典』
• - 『現世と来世』

影響

ピーター・テイラー・フォーサイスの神学は、特に罪、贖罪、そしてキリストの十字架の決定性といった主題に重きを置いており、これが後のバルトをはじめとする新正統主義神学の潮流に大きな影響を与えました。彼の著作は今日においても、キリスト教神学を学ぶ上で重要な文献とされています。

もう一度検索