ピーナッツオイル

ピーナッツオイル、あるいは落花生油（ピーナッツあぶら）と呼ばれるこの油は、落花生の種子から主に圧搾法によって抽出された後、高温での精製工程を経て製造される植物油です。空気中で固まりにくい不乾性油に分類され、主に食用として広く利用されています。

主な成分と期待される効果

ピーナッツオイルの主要な構成要素は、二種類の不飽和脂肪酸です。

オレイン酸: 約35%から70%を占め、体内の悪玉（LDL）コレステロール値を減少させる効果が期待されています。
リノール酸: 約10%から40%が含まれます。
ビタミンE: 高い抗酸化作用を持ち、細胞の酸化を防ぎ、老化の抑制に寄与すると考えられています。

また、原料であるピーナッツ自体には、強力な抗酸化ポリフェノールであるレスベラトロールが含まれており、これが持つ抗酸化作用は動脈硬化や高血圧といった生活習慣病の予防、さらには細胞の老化を遅らせる効果が期待されます。
これらの成分の働きにより、ピーナッツオイルは血管の健康維持や血行促進を助け、さらにホルモンバランスを整える可能性も示唆されています。これにより、冷え症の改善や肌のシミ予防といった美容面への効果も期待されています。

使用上の注意と潜在的リスク

ピーナッツオイルの使用にあたっては、特にアレルギーに関する重要な注意点があります。乳幼児向けのスキンケア製品にピーナッツオイルが配合されている場合、それを皮膚に塗布された乳幼児では、ピーナッツアレルギーの発症リスクが有意に高まることが報告されています。特に、乳児湿疹やアトピー性皮膚炎など、皮膚のバリア機能が損なわれている状態では、皮膚を通してアレルゲンに感作（体がアレルギー反応を起こす準備ができること）が進みやすくなり、アレルギーを発症するリスクが高まります。
さらに懸念されるのは、伝統的に行われてきたアレルギー予防のための離乳食における特定の食品の摂取制限と、皮膚へのアレルゲン（この場合はピーナッツオイル）の塗布が組み合わさることです。これは、乳幼児期にピーナッツの経口摂取を控える一方で、皮膚から頻繁にピーナッツ成分が取り込まれるという状況を生み出し、より重篤なピーナッツアレルギーにつながる可能性が指摘されています。
また、ピーナッツオイル自体は他の油と比較して酸化しやすい性質を持っているため、品質を維持するためには適切な保管が必要であり、開封後は早めに使い切ることが推奨されます。

JAS規格における分類

日本のJAS規格（日本農林規格）において、ピーナッツオイルに関する規格は2024年現在、「落花生油」と「精製落花生油」の二つの規格に分類されています。かつてはこれに加え、「落花生サラダ油」という規格も存在していましたが、これは平成21年（2009年）の規格改正時に削除されました。
削除された主な背景には、落花生油が高い凝固点を持つため、サラダ油に求められる特定の低温下での冷却試験に適合することが困難であったこと、そしてこの規格に適合する認証品の市場への流通が実質的に存在しなかったことが挙げられます。
落花生サラダ油の規格に冷却試験が追加されたのは、その前の平成16年（2004年）の改正であり、この試験要件の追加が、後に規格自体が削除される遠因となりました。

関連項目

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