ファイブ・ポインツ

ファイブ・ポインツ（5 Pointz）: ニューヨークの落書きの聖地

ファイブ・ポインツ、正式にはインスティテュート・オブ・ハイアー・バーリン（The Institute of Higher Burnin）やファイブ・ポインツ・エアロゾル・アート・センター（5Pointz Aerosol Art Center, Inc.）として知られるこの場所は、かつてニューヨーク市クイーンズ区ロング・アイランド・シティに存在していた独特のアートスペースでした。多くのアーティストが集まり、壁一面を使って多彩な落書きやアート作品を披露していました。その面積は19,000平方メートルにも及び、世界中から訪れるエアロゾルアーティスト達にとって、創造性を発揮するためのオープンスペースとなっていました。

概要

「ファイブ・ポインツ」という名称は、ニューヨーク市の5つの行政区（マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランド）を結びつけるという意味を持ちます。ファイブ・ポインツは、Jackson Avenueを挟んでMoMA PS1の対面に位置し、地下鉄7号線のコート・スクエア駅からも近いことから、多くの人々が訪れるスポットとなりました。

この施設はジェリー・ウォルコフ氏とその息子デービッド・ウォルコフ氏によって所有されており、アーティストたちに手頃な価格でスタジオを提供するために策定されました。2009年時点で、450平方フィートのスタジオの賃料は月額600ドルという非常に魅力的なものでした。

しかし、2011年3月、ウォルコフ氏はこの場所を再開発し高層住宅を建設する計画を発表しました。これによりファイブ・ポインツは解体されることが決定し、その後2014年から解体活動が始まり、2015年には完全に更地となりました。

歴史

ファイブ・ポインツは1892年に水道メーターの製造工場として建設され、1970年代にジェリー・ウォルコフ氏によって買収されました。1990年代には、アーティストたちが合法的にグラフィティを描けるスペースとして利用され始め、1993年には「ファン・ファクトリー（Phun Phactory）」が開設されました。この場所は、グラフィティアーティストたちへの公の発表機会を提供し、街の落書き行為を減少させる一環として機能していました。

2002年には、ジョナサン・コーエン氏がキュレーターに就任しました。彼は、アーティストが事前に作品のサンプルを提出することを求め、ファイブ・ポインツが正式なグラフィティのミュージアムとなることを目指しました。世界中から多くのアーティストが集まり、特に有名なアーティストたちの作品が壁面を飾りました。

2009年には、建物にさまざまな問題が発覚し、閉鎖を余儀なくされる事態が発生しましたが、コーエン氏の活動によりファイブ・ポインツへの関心は高まる一方でした。

2013年には、ニューヨーク市の計画局によってファイブ・ポインツの解体が承認されました。この計画では、二棟のタワーマンションが建設され、商業施設も設けられることになっていました。しかし、アーティストたちや支持者たちの間では、この場所の解体を惜しむ声が多く上がり、抗議活動も行われました。

反響

ファイブ・ポインツは、単なるアートスペース以上の存在であり、グラフィティ文化の中心地として多くのメディアで取り上げられることがありました。その影響力は広範囲に及び、アーティストたちはこの場所を「合法的な落書きの聖地」として高く評価していました。解体によって、ニューヨーク市内で安価にグラフィティを楽しむことができる場所が減少することに懸念を表明する声もありました。

大衆文化とファイブ・ポインツ

ファイブ・ポインツは、さまざまな映画や音楽ビデオの舞台にもなりました。特に、2013年の映画『グランド・イリュージョン』では重要なシーンが撮影され、多くのアーティストやミュージシャンによっても愛されていました。
この場所での活動は、ニューヨークのストリートカルチャーにおいて、今なお重要な位置を占めているのです。ファイブ・ポインツは、その名前と共にグラフィティアートの歴史の中に強く刻まれています。

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