ファウスト 第二部

ゲーテ『ファウスト』第二部：壮大な叙事詩と魂の救済

ゲーテの傑作戯曲『ファウスト』第二部は、第一部の悲劇的な結末から一転、壮大なスケールで展開する叙事詩です。マルガレーテを失った悲しみを乗り越えたファウストは、皇帝への献身、ヘレネとの恋、人造人間ホムンクルスの創造など、数々の冒険を経験します。そして、最終的には「自由の土地」建設という大事業を通して、魂の救済という大きなテーマへと到達します。

第1幕：皇帝への献身と幻影の舞踏会

物語は、豊かな自然の中で癒されたファウストが、皇帝の臣下として新たな人生を歩み始める場面から始まります。財政難に苦しむ帝国に、メフィストフェレスの策略とファウストの魔法によって、幻の富を担保とした紙幣が発行されます。さらに、ファウストは皇帝の要望に応え、古代ギリシアの英雄パーリスとヘレネを呼び出そうとします。しかし、その召喚劇は、壮大なスペクタクルとともに、ファウストのヘレネへの恋の始まりを告げるものとなります。

第2幕：ホムンクルスと古代ヴァルプルギスの夜

ファウストの弟子ヴァーグナーが創造した人造人間ホムンクルスは、ファウストと共にギリシア神話の世界「古代ヴァルプルギスの夜」へと旅立ちます。この場面では、エリクトー、ラミアー、スフィンクスといったギリシア神話の様々な存在が、幻想的な風景とともに描かれ、壮大なスケール感と神秘的な雰囲気が漂います。

第3幕：ヘレネとの恋とオイフォーリンの悲劇

ファウストはトロイア戦争後、祖国へ戻ったヘレネと出会い、恋に落ちます。2人の間に生まれたオイフォーリンは、「詩」を象徴する存在として描かれ、その短い生涯は、ファウストの「向上心」を反映しています。しかし、オイフォーリンの死は、ファウストの新たな旅立ちを予感させる、悲しい出来事です。

第4幕：戦争と国家の風刺

ファウストは、皇帝の軍を勝利に導き、海岸地帯の土地を獲得します。しかし、その勝利の裏には、悪魔との取引や、国家の腐敗という暗い影が潜んでいます。この場面では、戦争の残酷さや権力の腐敗が、痛烈に風刺されています。

第5幕：「自由の土地」と魂の救済

ファウストは海岸地帯に「自由の土地」を建設しようとしますが、その過程では、老夫婦との争いや、メフィストフェレスとの対立が描かれます。失明したファウストは、自らの事業の完成を夢見て、ついに絶命します。しかし、彼の魂は、天使たちによって救済され、マルガレーテの祈りと共に天国へと昇っていきます。

ギリシア神話との関わり

第二部では、ギリシア神話の神々や怪物が数多く登場し、物語に深みと広がりを与えています。古代ヴァルプルギスの夜の場面は、特にギリシア神話を背景とした幻想的な世界観を強く印象づけています。

作品全体のテーマ

『ファウスト』第二部は、第一部とは異なり、個人の救済というよりは、人間の活動、社会、国家といったより広いテーマを扱っています。ファウストの壮大な事業と、その過程での苦悩や葛藤は、人間の限界と可能性を問いかけるものです。そして、最終的な魂の救済は、人間存在の永遠性と希望を象徴していると言えるでしょう。

まとめ

『ファウスト』第二部は、第一部とは異なる壮大なスケールと多様なテーマを備えた、複雑で魅力的な作品です。ギリシア神話との融合、人間の業と救済、国家の興亡といった多角的な視点から、人間の存在意義を深く問いかける、ゲーテの偉大な業績の一つと言えるでしょう。この作品を通して、私たちは人間の可能性と限界、そして永遠の命題について、深く考える機会を得ることになるでしょう。

もう一度検索