ファラジ

ファラジ ─ オマーンとアラブ首長国連邦の地下水路灌漑システム

ファラジ（アラビア語: فلج、falaj）は、オマーン及びアラブ首長国連邦周辺で利用される伝統的な灌漑システムで、地下水路を用いて水を供給します。その効果的な水管理技術により、乾燥した地域での農業や生活用水の確保に大いに貢献してきました。

ファラジの特徴

ファラジの複数形はアフラージ（アラビア語: أفلاج、aflaj）と呼ばれ、オマーン国内には生活用水や農業用水として3,000以上のファラジが存在します。特に、ナツメヤシのプランテーションなど、地元の農業を支える重要な役割を担っています。中でも、5つのファラジがユネスコの世界遺産に指定されており、高い評価を得ています。アラブ首長国連邦内でもアル・アインの文化的遺跡群に関連するファラジが世界遺産リストに登録されています。また、2020年にはアラブ首長国連邦のアフラジや関連する知識と技術が無形文化遺産として認知されました。

歴史

ファラジがいつから利用され始めたかははっきりとした記録が残っていないものの、古代からこのシステムが存在していたことは確かです。数千年にわたり、ファラジは地域社会に不可欠な水源として機能し続けています。

ファラジの分類

ファラジはその水源と供給方法に応じて3つのタイプに分類されます。これにより、地域の地理条件や水資源の管理方法が反映されています。

1. Ghaili（الأفلاج الغيلية）: 最も多く存在するタイプで、全ファラジの約48%を占めます。主にワジ（渓谷）を水源としています。
2. Aini（الأفلاج العينية）: 山の涌き水を利用したシステムで、ファラジの約28%にあたります。
3. Daoudi（الأفلاج الداوودية）: 地下水を利用するタイプで、全体の24%を占めています。

オマーンの世界遺産

ユネスコは特に優れたファラジとして、オマーン国内にある5つのファラジを世界遺産に登録しました。それぞれのファラジは独自の水源、供給路、そして周辺施設を持ち、その歴史的重要性が認められています。

• - Daoudi型:

- ファラジ・アル・カトメーン（Falaj Al Khatmeen）
- ファラジ・アル＝マルキ（Falaj Al-Malki）
- ファラジ・ダリス（Falaj Daris）
- ファラジ・アル＝ムヤッサール（Falaj Al-Muyassar）

• - Aini型:

- ファラジ・アル＝ジェーラ（Falaj Al-Jeela）

これらのファラジは2000年以上にわたって地域社会を潤してきたことが評価され、持続可能な水管理の重要な文化として認識されています。登録基準の一つに、特に重要な文化や環境との関わりが持続可能に保たれている点が挙げられます。

ファラジは単なる灌漑システムに限らず、地域の歴史、文化、社会の基盤ともいえる存在です。これからもその価値を理解し、次世代へと伝えていくことが求められています。

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