ファンタスティック・プラネット

『ファンタスティック・プラネット』（原題: La Planète sauvage）は、1973年に公開されたフランスとチェコスロバキアの合作によるアニメーション映画です。ルネ・ラルーが監督を務め、ローラン・トポールとの共同脚本で制作されました。原作はステファン・ウルのSF小説『オム族がいっぱい』です。この作品は、その独特な世界観と社会風刺的なテーマ、そして印象的なビジュアルで、アニメーション映画史に残る傑作として知られています。

ストーリー

物語の舞台は、宇宙のどこかにある惑星イガムです。この惑星では、巨大なドラーグ族が高度な文明社会を築き、支配者として君臨しています。一方、ドラーグ族に比べて非常に小さな人類であるオム族は、原始的な生活を強いられています。オム族は、ドラーグ族からペットのように飼われたり、虫けらのように扱われたり、その存在は軽視されていました。

ドラーグ族の議会では、オム族の知性に脅威を感じ、絶滅を主張する強硬派と共存を模索する穏健派が対立していました。そんな中、ドラーグ族の少女ティバは、ある日、死んだ母親のそばで泣いているオム族の赤ん坊を拾い、テールと名付けて育て始めます。ドラーグ族の教育は、学習器と呼ばれる装置を使って脳に直接情報を送り込むという方法で行われますが、ティバが学習する際、いつもテールを傍に置いていたため、テールもまた知識を吸収していきます。ドラーグ族の1週間がオム族の1年に相当するため、テールは急速に成長し、イガムの地理や文化を学んでいきます。また、イガムの近くには「野性の惑星」と呼ばれる未開の惑星があり、ドラーグ族が生きるためには瞑想が不可欠であることも知ります。

成長したテールは、ペットとしての立場に疑問を抱き、学習器を持って逃げ出します。野生のオム族の集落にたどり着いたテールは、ドラーグ族の知識を活かして集落を助け、リーダーとしての地位を確立します。一方、ドラーグ族の議会ではオム族絶滅計画が実行に移され、多くのオム族が犠牲になります。テールたちは、ドラーグ族のロケットの墓場に隠れ都市を建設し、ドラーグ族の技術を応用して反撃の準備を始めます。そして、ドラーグ族時間で3季（オム族時間で15年）後、都市はドラーグ族に匹敵する科学技術力を獲得します。

やがて、テールたちは、未開の惑星への移住を目指し、ロケット開発を急ぎます。計画の途中、隠れ都市がドラーグ族に発見され襲撃を受けますが、テールたちはロケットで脱出に成功し、野性の惑星へと到達します。そこは首のない巨大な像が並ぶ荒野でした。像の首には、瞑想したドラーグ族の意識が宿っており、ドラーグ族の生命維持活動や生殖が行われていました。テールたちは像を破壊することで、ドラーグ族本体を死滅させることができることを突き止めます。

ドラーグ族の議会は紛糾しますが、シン知事の提案により、ドラーグ族とオム族の共存が模索されることになります。最終的にオム族は、ドラーグ族が用意した人工衛星「テール（La Terre 地球）」に移住することになり、物語は幕を閉じます。

登場する種族

オム族: 地球人に似た容姿を持つ小柄な人類。ドラーグ族に支配され、原始的な生活を強いられています。一部はドラーグ族のペットとして飼育されています。
ドラーグ族: 青い皮膚と魚のような耳を持つ巨大な種族。高度な科学文明を築いていますが、オム族に対しては残酷な一面も持ち合わせています。瞑想によって生命エネルギーを維持します。

声優

主要な登場人物の声優は以下の通りです。

テール（声 - ジェニファー・ダレ）
ティバ（声 - クリスティーン・マレル）
シン知事（声 - ジャン・トパ）

サウンドトラック

アラン・ゴラゲールが担当した音楽は、ピンク・フロイドの『原子心母組曲』を彷彿とさせるサイケデリックなサウンドが特徴です。ジャズやファンクの要素も取り入れられ、映画の独特な雰囲気を盛り上げています。このサウンドトラックは、70年代半ばにフランスでオリジナル盤がプレスされ、現在では高値で取引されています。

その他

本作は、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』に影響を与えたと指摘されています。
監督のルネ・ラルーは、本作の制作中に共同脚本のローラン・トポールが制作を投げ出したことに激怒したというエピソードがあります。
『ハリウッド・リポーター』選出の「大人向けアニメ映画ベスト10」において10位にランクインしています。

『ファンタスティック・プラネット』は、その斬新なストーリー展開、独創的なビジュアル、そして社会的なメッセージ性によって、今なお多くの人々を魅了し続ける傑作アニメーション映画です。

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