ファーストルック契約

ファーストルック契約とは

ファーストルック契約とは、映画監督や製作会社が企画した映画の企画を、特定の配給会社が優先的に検討する権利を得る契約のことです。これは優先交渉権契約の一種であり、映画業界における独特の契約形態として知られています。

ハリウッドにおけるファーストルック契約

ハリウッドの映画スタジオは、年間で数百もの企画案件を取得します。これらの企画を効率的に管理し、開発を進めるために、スタジオは外部の製作会社と連携する必要があります。そこで、スタジオは数十名のフリーランスの映画プロデューサーと年間契約を結び、企画開発をサポートしてもらいます。この契約は「ハウスキーピング・ディール」とも呼ばれます。

映画監督側のメリット

ファーストルック契約を結ぶことで、映画監督は企画段階から配給会社からの資金援助を受けられます。これにより、企画段階における資金面のリスクを軽減することができます。一般的に、契約を結んだ監督やプロデューサーは年間20万ドルから30万ドルの維持費を受け取ります。ヒット作を多く製作した監督の場合、この金額は億単位に達することもあります。

契約内容の詳細

企画が配給会社との交渉で合意に至らなかった場合、監督はその企画を他の配給会社に持ち込むことができます。ただし、最初に契約先の配給会社が提示した条件よりも低い条件で他社と契約することはできません。また、一度交渉が決裂した場合でも、企画内容に変更を加えた場合は、再度契約先の配給会社と優先的に交渉する必要があります。そのため、ファーストルック契約期間中に他の配給会社と交渉することは難しいとされています。

契約のデメリット

完全な独占契約に比べると、形式上は他社との交渉が認められているため、契約金は低く抑えられます。そのため、一部の監督は、配給会社による安易な囲い込みとしてこの契約を嫌う傾向があります。

日本におけるファーストルック契約

日本では、周防正行監督の「Shall we ダンス?」が全米公開される際、米ミラマックスとの間でファーストルック契約が結ばれたことで、この契約が一般に知られるようになりました。現在、北村龍平監督や一瀬隆重プロデューサーなどが同様の契約を結んでいることが明らかになっています。

ファーストルック契約を結んでいる映画人・製作会社

ワーナー・ブラザース
マルパソ・プロダクションズ（クリント・イーストウッド）
アピアン・ウェイ（レオナルド・デカプリオ）
バッド・ハット・ハリー・プロダクションズ（ブライアン・シンガー）
スモーク・ハウス（ジョージ・クルーニー）
セクション・エイト（スティーヴン・ソダーバーグ）
20世紀フォックス
オズラ・ピクチャーズ（一瀬隆重）
ユニバーサル・ピクチャーズ
ヴァーティゴ・エンターテイメント

ファーストルック契約は、映画業界における企画開発と資金調達の仕組みを理解する上で重要な要素です。監督と配給会社の関係性を特徴づける契約形態として、今後も注目されるでしょう。

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