ファースト・エイド・キット

ファースト・エイド・キット（First Aid Kit）は、スウェーデンを代表する女性フォークデュオです。メンバーは、姉のジョアンナ・ソダーバーグと妹のクララ・ソダーバーグという実の姉妹で構成されています。

バイオグラフィー

ユニットの結成は2007年、二人が育ったストックホルム郊外のエーンシェデにて行われました。姉のジョアンナは1990年 10月31日、妹のクララは1993年 1月8日生まれです。

彼女たちの家庭環境も興味深いものでした。父親のベント・ソダーバーグは、かつてスウェーデンで人気を博したロックバンド、ロリータ・ポップの中心メンバーでしたが、ジョアンナの誕生を機に音楽活動から身を引き、歴史と宗教の教師へと転身しました。また、母親は映画撮影技術の資格を持つ人物でした。

幼少期には、マイクに合わせて縄跳びをするという少し変わった趣向のコンサートに参加するなど、独特の環境で育ちます。クララは6歳の時、「Femton mil i min Barbiebil」という曲を初めて書き上げ、披露したというエピソードが残っています。クララは後に地元の音楽専門学校への入学を試みましたが、最終的には実現しませんでした。

姉妹が本格的に音楽の道を志す大きなきっかけとなったのは、2005年、クララが12歳を迎えた頃でした。ジョアンナがアメリカのカントリーロックバンド、ブライト・アイズをクララに紹介したことから、二人は音楽へのめり込んでいくことになります。

彼女たちは、ボブ・ディラン、ジョニー・キャッシュ、レナード・コーエン、エミルー・ハリスといった、アメリカンルーツミュージックの巨匠たちに強く影響を受けました。彼らの楽曲をカバーしては、家族が集まるクリスマスパーティーなどで披露していたといいます。

キャリアの発展

2007年4月には、音楽共有サイトMySpaceに自身のアカウントを開設し、数曲の自作曲をアップロードしました。同年夏にはそのうちの1曲が最優秀ソングに選ばれ、これを機に現地のレコード会社からの声がかかり、ストックホルム市内のパンクト・メディス図書館で初のライブパフォーマンスを行うこととなりました。この図書館でのライブこそ、ファースト・エイド・キットとしての最初のステージだったと、姉妹は後に振り返っています。

翌年にはスウェーデンのラビッド・レコーズと契約を結び、初めてのEP盤を発表。この時期から本格的なライブ活動を開始しました。2008年末には、イギリスのインディーレーベル、ウィチタ・レコーズとも契約を結び、活動の幅を広げていきます。

2010年にはファーストアルバム『The Big Black and The Blue』をリリース。同年10月にはテネシー州ナッシュビルで開催されたカントリーフェスに出演しました。このライブでのパフォーマンスがホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトの目に留まり、彼は彼女たちを絶賛。ジャックが主宰するサード・マン・レコーズから、バッフィー・セント・マリーやメル・ロンドン＆タンパ・レッドのカバー曲をレコーディングし、リリースする機会を得たことは、彼女たちのキャリアにとって重要な転機となりました。

2012年にはセカンドアルバムとなる『The Lion's Roar』を発表し、さらに評価を高めます。翌2013年には、彼女たちが敬愛するブライト・アイズのコナー・オバーストと共にヨーロッパツアーを行い、ファンにとって忘れられない体験となりました。

そして2014年にリリースされたサードアルバム『Stay Gold』は、アメリカのビルボード誌のアルバムチャート「Billboard 200」で23位にランクイン。これを機に世界的な知名度を獲得し、同年6月には同作で日本デビューも飾りました。また、日本の代表的な音楽フェスティバル、フジロックフェスティバルにも出演し、その名を広めました。

2018年 1月には、フォースアルバム『Ruins』をリリース。これも「Billboard 200」で47位にランクインしましたが、残念ながら日本では未発売となっています。

ファースト・エイド・キットは、そのルーツミュージックへの深い愛情と、姉妹ならではの美しく溶け合うハーモニー、そして叙情的な歌詞によって、世界中のリスナーを魅了し続けています。

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