フィアット・130

フィアット130は、1969年から1977年にかけてイタリアの自動車メーカー、フィアットによって生産された大型乗用車です。フィアット1800/2100/2300やランチア・フラミニアの後継モデルとして市場に登場しました。

概要

1969年3月にデビューした当初は、アメリカ車を彷彿とさせるデザインの4ドアセダン（ベルリーナ）のみでした。しかし、先代のフィアット2300と比較すると、4輪独立サスペンション、4輪ディスクブレーキ、パワーステアリング、リミテッドスリップデフなど、当時としては先進的なメカニズムを標準装備していました。

初期モデルに搭載された「130タイプA型」エンジンは、V型6気筒2,866ccで、140PS/5,600rpmを発揮しました。このエンジンは、同年デビューしたフィアット128のエンジンをベースに開発されており、ボアとストロークをそれぞれ20%拡大し、1気筒を取り除いて60°のV型に2つ組み合わせた設計でした。フィアット130のエンジンは、同社の小型大衆車のものを基に開発されたもので、ディーノ206/246のV6エンジンとの共通性はありません。

1971年3月には、カロッツェリア・ピニンファリーナがデザインしたクーペが追加されました。セダンとは全く異なる内外装デザインが特徴で、エンジンも「130タイプB型」としてボアアップされ、3,235cc、165PS/5,600rpmとなりました。しかし、リッター当たりの出力が50馬力前後と、熱効率は高くありませんでした。1,200rpm程度からスムーズに加速する柔軟性はありましたが、高回転域では騒がしかったようです。車両重量が1,600kg近かったこともあり、燃費も芳しくありませんでした。

B型エンジン搭載時に、セダンの内装もクーペに準じたデザインに変更され、エアコンも搭載されました。これにより、セダンの内装の安っぽさが改善されました。

サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット式を採用し、スプリングにはコイルではなくトーションバーを用いていました。これにより、エンジンベイにV6エンジンやエアコンを搭載するスペースを確保していました。リアの独立懸架は、コイルスプリングを使用していましたが、フィアット・ディーノ後期型（2400）とも共通の機構で、当時のメルセデス・ベンツやBMWにも匹敵する良好な接地性能を発揮しました。強力なブレーキと正確なZF製のパワーステアリングも相まって、ロードホールディングは良好でしたが、乗り心地は振動やロードノイズの遮断などの点で、大型車としては最良レベルとは言えませんでした。

1976年にランチア・ガンマに後を譲り、セダンは生産終了となりました。セダンの生産台数は15,093台で、フィアットブランドで高級車を販売することの難しさを物語っています。クーペは翌年まで継続生産され、4,294台が生産されました。日本には、新車当時には輸入されませんでした。

クーペのデザインは、ピニンファリーナの傑作の一つと評価されており、現在では状態の良い130クーペは希少車となっています。このクーペをベースとした2ドアスポーツワゴンの「マレンマ」（1974年）や、4ドアセダンの「オペラ」（1975年）がピニンファリーナによって試作されましたが、いずれも生産には至りませんでした。

フィアット130は、その先進的なメカニズムと美しいデザインにより、現在でも多くのファンを魅了する名車です。

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