フィアレス (テイラーズ・ヴァージョン)

『フィアレス (テイラーズ・ヴァージョン)』（英: Fearless (Taylor's Version)）は、アメリカ合衆国のシンガー・ソングライター、テイラー・スウィフトが手掛けた、自身のキャリアにおける最初の再録音スタジオ・アルバムです。2021年4月9日、リパブリック・レコードより発売されました。

このアルバムは、2008年に発表されグラミー賞最優秀アルバム賞にも輝いたテイラーの2枚目のアルバム『Fearless』の再録バージョンにあたります。本作は、彼女が自身の旧譜6作品の原盤権を取り戻すことを目的として開始した、大規模な再録プロジェクトの記念すべき第一弾として位置づけられています。

制作背景

本作の制作は、2019年8月に起きた出来事が大きな契機となっています。テイラー・スウィフトが過去に在籍したビッグマシンレコードが、タレントプロデューサーであるスクーター・ブラウンによって買収されたことで、彼女は自身の原盤権に対するコントロールを失うことになりました。これを受け、テイラーは自身の楽曲の権利を取り戻すため、旧ビッグマシンレコード時代のアルバムをすべて再録音する意向を公に表明しました。『フィアレス (テイラーズ・ヴァージョン)』は、その揺るぎない決意の表れとして世に送り出された作品です。

収録曲

アルバムには、オリジナル版『Fearless』のプラチナ盤に収録されていた19曲に加え、映画『バレンタインデー』の主題歌として発表されたシングル「Today Was a Fairytale」の再録バージョン、合計20曲が収められています。これらはすべて、現代のテイラーの声と演奏によって新たに録音されたものです。

さらに特筆すべきは、「From the Vault」と銘打たれた、当時の制作過程で生まれながらもアルバムには未収録だった6曲が初めて公式に収録された点です。これらの楽曲は、当時のフィーリングを保ちつつ、現代のサウンドで蘇っています。これにより、本編は全26曲というボリュームになりました。物理メディアであるCD盤やアナログ盤には、さらに「Love Story (Elvira Remix)」がボーナストラックとして追加収録されており、ファンにとって貴重なアイテムとなっています。

制作体制と参加ミュージシャン

本作のプロデュースは、テイラー・スウィフト自身が中心となり、長年のコラボレーターであるクリストファー・ロウと共に手掛けました。また、近年の傑作『folklore』や『evermore』で共同作業を行ったジャック・アントノフとアーロン・デスナーもプロデューサーとして参加しており、多様な才能が結集しています。彼らは、2008年のオリジナル版『Fearless』のサウンドや雰囲気を可能な限り忠実に再現しつつ、現代の技術で洗練させることを目指しました。

ゲストボーカルには、オリジナル版にも参加していたコルビー・キャレイを始め、カントリーミュージック界で高い評価を得ているマレン・モリスや、ベテランアーティストであるキース・アーバンが参加しており、再録バージョンに新たな魅力を加えています。

収録曲表記

アルバムの収録曲名には、そのバージョンを示す表記が追加されています。Disc 1の全曲とDisc 2の1曲目から7曲目までの、オリジナルアルバム収録曲の再録バージョンには、曲名の後に「(Taylor's Version)」と括弧書きで記されています。一方、Disc 2の8曲目から13曲目までに収録されている、未発表だった「From the Vault」の楽曲には、曲名の後に「(From the Vault)」と括弧書きで記されており、それぞれの曲が持つ特別な位置づけが明確に示されています。

『フィアレス (テイラーズ・ヴァージョン)』は、単なる過去作品の焼き直しではなく、アーティストが自己の権利と創作物を守るという強いメッセージを内包した作品であり、テイラー・スウィフトのキャリアにおける重要な一歩を示すものです。

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