フィコシアニン

フィコシアニン

フィコシアニンは、藍藻をはじめとする特定の藻類に主に含まれる、青色の光合成補助色素タンパク質です。太陽光のエネルギーを効率よく集め、光合成系へ伝える重要な役割を担っています。この色素は、フィコシアノビリンという開環テトラピロール構造を持つビリンが開色団として、タンパク質と結合した色素タンパク質であり、水に溶けやすい性質を持ちます。

種類と分布

フィコシアニンは、藍藻のほか、灰色藻、紅藻、クリプト藻、さらには一部の原生生物である Paulinella chromatophora など、幅広い生物に見られます。結合する発色団の種類によって分類され、フィコシアノビリンのみを持つものをC-フィコシアニン、フィコシアノビリンとフィコエリスロビリンの両方を持つものをR-フィコシアニンと呼びます。これらの名称はかつての生物由来を示唆していましたが、現在は発色団の組成に基づいています。

複雑な構造

フィコシアニンは、細胞内でフィコビリソームという巨大な複合体の一部として機能します。まず、アルファとベータのサブユニットが結合してヘテロ二量体を形成し、これが三つ集まって三量体ディスク、さらに二枚重なって六量体ディスクとなります。これらの六量体ディスクはリンカータンパク質で連結され、棒状のロッドを形成します。ロッドは、アロフィコシアニン主体のコアと結合し、最終的にフィコビリソームという超複合体を構成します。

光捕集とエネルギー伝達機能

フィコビリソームは、光合成の場であるチラコイド膜表面に結合しています。フィコシアニンは太陽光エネルギーを効率的に吸収し、集めます。集められたエネルギーは、アロフィコシアニンを介して光合成の初期反応を担う光化学系Ⅱ複合体へ伝達されます。フィコシアニンは水溶性であり、フィコビリソームとして膜外に位置するという、カロテノイドなどの脂溶性色素とは異なる特徴的な局在を示します。

物理的性質と応用

フィコシアニンの水溶液は鮮やかな青色で、赤い蛍光を発する特性があります。この蛍光は、免疫測定法などバイオ分野での標識に利用されます。
また、その安全性から食品や化粧品など幅広い分野で利用されています。

食品: スピルリナ由来のフィコシアニンは、天然青色着色料として冷菓、乳製品、飲料、グミなど多くの食品に利用されています。
スキンケア: 肌の水分保持や乾燥緩和に役立つ可能性が報告されており、スキンケア製品への配合も試みられています。

名称由来

「フィコシアニン」の名はギリシャ語の「phyco」（藻類）と「cyan」（青色）に由来し、藻類に見られる青い色素タンパク質であることを示しています。特にスピルリナはその主要な供給源の一つとして知られています。

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