フィリップ・ウォーカー

フィリップ・ウォーカー：テキサス・ブルースの巨匠

フィリップ・ウォーカー（Phillip Walker, 1937年2月11日 - 2010年7月22日）は、アメリカ合衆国ルイジアナ州出身のブルースギタリスト、シンガーです。テキサス・ブルースの流れを汲む、スウィング感あふれる独特のサウンドで、長年にわたりブルース界を牽引しました。

生い立ちと音楽との出会い

1937年、ルイジアナ州ウェルシュで小作人の家庭に生まれました。12人兄弟の7番目という大家族の中で育ち、8歳の時にテキサス州ポートアーサーへ移住。そこで、クラレンス・"ゲイトマウス"・ブラウンやライトニン・ホプキンスといった、テキサスを代表するギタリストたちの音楽に触れ、ギターの腕を磨きました。

1953年には、ザディコの巨匠であるクリフトン・シェニエと出会い、彼のバンド、ルイジアナ・レッド・ホット・バンドに加入。数年間、シェニエとのツアーやレコーディングを通じて音楽活動を共にしました。また、リトル・リチャード、ファッツ・ドミノ、エタ・ジェイムズなど、数々の著名なアーティストのバックバンドとしても活躍しました。

ロサンゼルスでの成功と音楽性の確立

1959年、ウォーカーは活動の拠点をカリフォルニア州ロサンゼルスに移し、エルコ・レーベルからシングル「Hello My Darling」でデビュー。この曲は彼の代表曲となり、その後も何度かレコーディングされています。1960年代には、アイナ・"ビー・ボップ"・ビアトリスと結婚し、彼女とのデュオ、フィル・アンド・ビー・ボップとしても活動しました。AMCなどのレーベルでソロ、デュオ双方のレコーディングを重ね、エディ・テイラーやテディ・レイノルズといったアーティストのサイドマンとしても活動しました。

1970年代に入り、ようやくまとまった作品をリリースする機会を得ます。プロデューサーのブルース・ブロムバーグとの出会いを経て、1973年に彼のプロデュースによるアルバム『The Bottom of the Top』でアルバムデビュー。1977年には、『Someday You'll Have These Blues』をリリースしました。

1979年には、ハーモニカプレイヤーのジョージ・スミスと共に初来日を果たし、吾妻光良や山岸潤史といった日本のギタリスト達と共演しました。

円熟期の活動と晩年

1980年代には、ラウンダーやハイトーンといったレーベルから作品をリリース。1990年代には、オーティス・グランドとの共作『Big Blues from Texas』をイギリスのレーベル、JSPから発表しました。その後、ブラックトップと契約し、『Working Girl Blues』ではザディコ調の曲も取り入れ、ルイジアナ州出身らしい一面を見せました。

1997年には、パークタワー・ブルース・フェスティバルに出演のため2度目の来日。1999年には、ロニー・ブルックス、ロング・ジョン・ハンターと組み、ローンスター・シュートアウト名義でアリゲーターからアルバムをリリースし、ツアーも行いました。

2002年にはライヴ盤を発表し、2007年にはスタジオ録音作としては9年ぶりとなる『Going Back Home』をリリース。深みのあるサウンドで健在ぶりを示しました。

2010年7月22日、カリフォルニア州パームスプリングスにて心不全のため死去。73歳でした。

ディスコグラフィー

『ボトム・オブ・ザ・トップ』 - The Bottom of the Top (1973年)
『サムデイ・ユール・ハヴ・ディーズ・ブルース』 - Someday You'll Have These Blues (1977年)
『ザ・ブルース・ショウ! ライヴ・アット・ピット・イン』 - The Blues Show! Live at Pit Inn (1980年) (ジョージ・スミスとの共演)
From L.A. to L.A. (1982年)
Tough As I Want to Be (1984年)
『ブルース』 - Blues (1988年)
Big Blues from Texas (1994年)
Working Girl Blues (1995年)
I Got a Sweet Tooth (1998年)
Lone Star Shootout (1999年) (ロニー・ブルックス、ロング・ジョン・ハンターとの共作)
Live at Biscuits & Blues (2002年)
『ゴーイング・バック・ホーム』 - Going Back Home (2007年)

フィリップ・ウォーカーは、テキサス・ブルースの伝統を受け継ぎながらも、独自の音楽性を追求し続けた偉大なブルースマンでした。彼の音楽は、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

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