フィリップ・シャープ

フィリップ・アレン・シャープ

フィリップ・アレン・シャープ（Phillip Allen Sharp）は、1944年6月6日にアメリカ合衆国ケンタッキー州で生まれた、卓越した分子生物学者であり遺伝学者です。彼の最も重要な貢献は、真核生物の遺伝子が単純な連続的な配列ではなく、機能を持たない介在配列、すなわち「イントロン」を含む不連続な構造を持っていること、そして、これらのイントロンが遺伝情報からタンパク質を合成する過程で除去され、さらに一つの遺伝子から複数の種類のタンパク質が生み出されるメッセンジャーRNA（mRNA）のスプライシングという精巧な仕組みが存在することを明らかにした点にあります。

この画期的な発見は、遺伝情報の流れに関する従来の理解を根本から覆すものでした。彼は、リチャード・ロバーツと共に、この真核生物遺伝子の分断構造とmRNAスプライシングの機構の発見により、1993年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞しました。

経歴

シャープ博士は、ケンタッキー州ファルマスで生を受け、学術の道を歩み始めました。1969年には、イリノイ大学の大学院でDNA構造の研究に取り組み、化学分野で博士号（Ph.D.）を取得しました。その後、1971年までカリフォルニア工科大学で、細菌のプラスミド構造に関する研究に従事しました。さらに研究を深めるため、コールド・スプリング・ハーバー研究所に移り、ノーベル賞受賞者であるジェームズ・ワトソンの指導のもと、ヒト細胞における遺伝子発現のメカニズムについて研究を進めました。

1974年、同じくノーベル賞受賞者であるサルバドール・ルリアからの招聘を受け、マサチューセッツ工科大学（MIT）に移籍しました。彼は現在に至るまで、同大学の生物学教授として、教育と研究の最前線で活躍しています。また、科学の成果を応用する分野にも積極的に関与し、1978年にはウォルター・ギルバートらと共にバイオテクノロジー企業であるバイオジェン（Biogen）を共同で設立しました。さらに、1985年にはMITのがんセンター所長に就任するなど、研究機関の運営やがん研究の推進においても重要な役割を果たしました。

私生活では、1964年に結婚し、三人の娘を育てています。

主な受賞歴

フィリップ・A・シャープ博士は、その卓越した研究成果に対して数多くの栄誉を受けています。ノーベル生理学・医学賞の他に、以下のような権威ある賞を受賞しています。

1980年：イーライリリー生物化学賞、米国科学アカデミー賞分子生物学部門
1986年：ガードナー国際賞
1988年：コロンビア大学 ルイザ・グロス・ホロウィッツ賞
1991年：ピッツバーグ大学 ディクソン賞医学部門
1999年：ベンジャミン・フランクリン・メダル
2004年：アメリカ国家科学賞

これらの受賞歴は、彼が分子生物学および遺伝学の分野において、いかに多大な影響を与え、その功績が広く認められているかを物語っています。

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