フィリップ・スーポー

フィリップ・スーポー：シュルレアリスムの先駆者からレジスタンス活動家へ

フィリップ・スーポー(1897-1990)は、20世紀フランスを代表する詩人、小説家、評論家、ジャーナリストです。シュルレアリスム運動の創始期に重要な役割を果たした一方、反ファシズム運動にも積極的に関与するなど、多様な顔を持つ人物でした。本稿では、彼の生涯と多様な活動を詳細に検討します。

パリでの生い立ちと教育

パリ郊外に生まれたスーポーは、裕福なブルジョワ家庭で育ちました。医師だった父を早くに亡くした彼は、実業家だった伯父の影響を受けつつも、厳格なカトリック系の学校生活への反発から、読書に没頭する少年時代を過ごしました。デフォー、スウィフト、ペロー、そしてサント＝ブーヴなど、幅広いジャンルの作品を読み漁り、独自の感性を育んでいきました。

リセ・コンドルセ在学中には、ドイツ留学を経験。帰国後も学業よりも読書に熱中し、バカロレア取得に苦戦するなど、型にはまらない性格は変わらず、様々なジャンルの文学作品に親しんでいきました。哲学にも関心を持ち、カントやベルグソンなどの思想に触れていました。

アポリネールとの出会い、そしてシュルレアリスムへ

第一次世界大戦中には兵役につきますが、チフス予防接種による体調不良で除隊。療養中に雑誌『SIC』でアポリネールの詩と出会ったことが、スーポーの作家人生における転機となります。アポリネールに才能を認められたスーポーは、前衛的な芸術家や作家が集うサークルに積極的に参加するようになります。

アポリネールを通してアンドレ・ブルトンと出会い、共にシュルレアリスム運動の中核を担うことになります。特に、ブルトンとの共同作品である『磁場』は自動記述という手法を用いたシュルレアリスムの代表作であり、フロイトの自由連想法の影響を強く受けています。

『リテラチュール』誌とシュルレアリスム運動

ブルトン、アラゴンと共に創刊した雑誌『リテラチュール』誌では、シュルレアリスムの理論や作品を発表し、運動の展開に大きく貢献しました。『リテラチュール』誌はダダイスムとの複雑な関係性を持ちつつ、シュルレアリスムの独自の路線を確立していく過程がうかがえます。

しかし、シュルレアリスム運動への関与は長く続きませんでした。運動内の共産主義への傾倒や、スーポー自身のジャーナリズム活動への関心の高まりから、1926年にシュルレアリスム運動から離脱します。

シュルレアリスム離脱後、そして第二次世界大戦

シュルレアリスム離脱後も、スーポーは精力的に執筆活動を行いました。小説、評論、自伝、児童文学など、ジャンルを問わず幅広い作品を発表し続け、その才能は衰えることはありませんでした。

第二次世界大戦中は、ナチス・ドイツに対抗するレジスタンス運動に参加。ラジオ局の設立やアルジェでの出版活動などを通して、祖国フランスの解放に貢献しました。戦争体験は、彼の後年の作品にも大きな影響を与えました。

戦後と晩年

戦後は国営放送局での勤務やユネスコでの活動、児童文学の翻訳・編集など、多様な活動を行いました。晩年には、三部作の自伝を執筆するなど、充実した時間を過ごしました。1990年に92歳で亡くなるまで、精力的に活動を続けました。

まとめ

フィリップ・スーポーは、シュルレアリスムという前衛的芸術運動の中心に身を置きながらも、ジャーナリズムやレジスタンス活動など、多様な分野で才能を発揮した稀有な存在でした。彼の複雑で多面的な生涯は、20世紀の激動の時代を生き抜いた一人の知性と創造力の軌跡を示しています。彼の作品は、今もなお、多くの読者に深い感銘を与え続けています。

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