フィリップ・ド・ナヴァール

フィリップ・ド・ナヴァール：フランス王位を夢見た王族

フィリップ・ド・ナヴァール（1336年 - 1363年）は、百年戦争の時代に、フランス王位をめぐる陰謀に深く関わった人物です。フランス王家カペー朝傍系エヴルー家の出身で、ナバラ王フィリップ3世と女王ジャンヌ2世の息子として生まれました。兄には「悪人王」として知られるナバラ王シャルル2世がいます。

王位への野望と暗殺

母ジャンヌ2世はフランス王ルイ10世の娘でしたが、サリカ法典によりフランス王位を継承できず、ナバラ王位のみを継承しました。このため、フィリップと兄シャルルはフランス王位への不満を抱き、フランス王ジャン2世に挑戦する姿勢を示しました。1354年、フィリップは兄の指示を受け、ジャン2世の腹心であったシャルル・ド・ラ・セルダを暗殺するという大胆な行動に出ます。

ノルマンディーでの反乱

1356年、ジャン2世がフィリップの妻ヨランドと兄シャルルを捕虜にすると、フィリップはエヴルー家の総帥として立ち上がり、ノルマンディー地方でフランス王権に対する反乱を組織します。フランス王軍にエヴルーを占領されると、イングランドと同盟を結び、ランカスター公らと共にノルマンディー各地を略奪。ヴェルヌイユの占領には成功したものの、エヴルー奪回は果たせませんでした。

イングランドとの連携とノルマンディー掌握

フィリップはイングランドに渡り、フランス王位を主張するエドワード3世に忠誠を誓い、ノルマンディー総督に任命されます。ジャン2世がポワティエの戦いでイングランド軍の捕虜となると、ノルマンディーに戻り、コタンタン半島全域を支配下に置きました。一時はパリ方面への略奪作戦も行い、兄シャルルの脱獄後は、共に王権への反逆を企てたエティエンヌ・マルセルやジャックリーの乱の指導者らと手を組みました。

和解と最期

1360年、ブレティニー条約の締結により、フランス王家とエヴルー家は和解。フィリップは傭兵団に参加しますが、1363年夏、ベルトラン・デュ・ゲクランの指揮下、バイユー、カーンへの遠征中に命を落としました。彼の遺体は、エヴルーのノートルダム大聖堂に埋葬されています。

フィリップ・ド・ナヴァールは、フランス王位への野望を抱き、激動の時代を駆け抜けた人物でした。その生涯は、百年戦争という時代背景の中で、複雑に絡み合う政治的陰謀と、王位をめぐる人々の思惑を色濃く反映しています。

外部リンク

Materialsammlung bei genealogie-mittelalter.de

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