フィリップ・ノエル＝ベーカー

フィリップ・ノエル＝ベーカー男爵について

フィリップ・ノエル＝ベーカー男爵（Philip John Noel-Baker）は、1889年11月1日に生まれ、1982年10月8日に没したイギリスの多才な人物です。彼は政治家としてのキャリアを築く一方で、外交官や陸上競技選手としてもその名を馳せました。1920年のアントワープオリンピックでは男子1,500メートルで銀メダルを獲得し、その後、1959年にはノーベル平和賞を受賞しました。

生い立ちと教育

ノエル＝ベーカー男爵は、クエーカー教徒の家庭に生まれました。彼はケンブリッジ大学、ミュンヘン大学、パリ大学で学び、その学問的な基盤を築いていきました。青年期には中長距離走でのパフォーマンスが目を引き、ストックホルムオリンピックに英国代表として出場しました。彼は1920年のアントワープ大会では選手兼監督として1,500メートルに挑み、メダルを手にしました。さらに、1924年のパリオリンピックでも同様の役割で参加しました。

政治と国際関係への進出

ケンブリッジ大学卒業後、ノエル＝ベーカーはイギリス労働党に所属し、第一次世界大戦では衛生兵として従軍しました。この戦争体験は、後の彼の平和活動に大きな影響を与えました。特に彼は、パリ講和会議においてアメリカのウッドロウ・ウィルソン大統領と共に国際連盟の創設に尽力し、その事務局員としても活躍しました。

1924年にはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで国際関係学の教授となり、この分野での研究と教育の重要な役割を担いました。彼は1929年に庶民院議員に当選し、続いて重要な国際会議や政府の要職を歴任しました。特に、ウィンストン・チャーチルの内閣では運輸相として政務に携わり、1945年にはクレメント・アトリー内閣で国務相と国連代表を兼任しました。

平和活動とノーベル賞受賞

ノエル＝ベーカーは生涯を通じて一貫して平和や軍縮の推進に努めました。特に、第一次世界大戦の経験から、戦争の悲惨さを深く理解し、反戦運動に参加しました。彼の努力は1959年に結実し、ノーベル平和賞を受賞しました。オリンピックメダリストかつノーベル賞受賞者であるのは、2023年時点で彼ただ一人となっています。

受賞後も彼は核兵器に対して強い反対の立場を取り、党派を越えた反核・軍縮活動を推進しました。彼の反戦と平和への取り組みは、1919年のパリ講和会議から晩年に至るまで、実に60年以上にわたりました。

晩年と栄誉

1970年にはヒロシマ会議に出席するために日本を訪れ、その活動は国際的にも高く評価されています。1977年には貴族院議員として一代男爵に叙せられ、彼の業績を象徴する存在となりました。ウェストミンスターで生涯を終えた彼は、今日でも「核兵器廃絶・軍縮運動の大先達」として名を残しています。彼の業績と信念は、多くの人々に影響を与え続けています。

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