フィリップ・フォン・デア・プファルツ (1627-1650)

フィリップ・フォン・デア・プファルツ（Philipp von der Pfalz）は、1627年9月16日に生まれ、1650年12月16日に死去した、ドイツのプファルツ＝ジンメルン家の一員です。父はプファルツ選帝侯フリードリヒ5世、母はイングランド王・スコットランド王ジェームズ1世の娘であるエリザベス・ステュアート。夫妻にとって第10子にあたる七男として生を受けました。

フィリップが生まれた当時、父フリードリヒ5世はボヘミア王位を巡る争いに巻き込まれ、三十年戦争の渦中で選帝侯の地位を失い、亡命生活を送っていました。そのため、フィリップは両親が避難していたホラント州のデン・ハーグで誕生しました。幼少期にはフランスのパリ宮廷に預けられ、教育を受けましたが、後に長兄であるカール・ルートヴィヒの判断により、デン・ハーグに滞在していた母のもとへ戻されました。

兄カール・ルートヴィヒは、叔父にあたるイングランド王チャールズ1世と議会の間で勃発したイングランド内戦において、叔父が率いる王党派ではなく、議会派を支持していました。カール・ルートヴィヒがイングランド議会に対し、ヴェネツィア共和国からの援軍を要請する際の密使として、末弟であるフィリップを派遣した記録が残っています。

フィリップの生涯における決定的な出来事は、1646年6月21日にデン・ハーグ市街で発生しました。彼は、母エリザベスが深く寵愛していたレピネー侯爵（Marquis de l'Epinay）を殺害したのです。この事件により、フィリップはオランダ国内にとどまることができなくなり、国外への逃亡を余儀なくされました。

母エリザベスは、この寵臣殺害事件に関してフィリップを一切許しませんでした。彼女はフィリップとの対話を拒み、生涯彼を息子として認めようとしなかったと伝えられています。これは事実上の勘当であり、フィリップは母からの愛情と支援を完全に失いました。

母から見放されたフィリップは、その後、ロレーヌ公国の軍に身を投じました。彼は軍人としての道を歩み、騎兵連隊の指揮官（連隊長）を務めることになります。軍人として各地を転戦する中で、1650年末、フィリップはフランスで起こっていたフロンドの乱に参加していました。彼は従叔父にあたるフランスの著名な将軍、テュレンヌ元帥の麾下で戦いましたが、同年12月16日、ルテルの戦い（Bataille de Rethel）において戦死しました。

フィリップの遺体は、戦場からスダンまで運ばれました。そして、スダンのサン＝シャルル教区教会（プロテスタント教会）内に設けられた、テュレンヌ元帥の実家であるブイヨン公爵家の墓所に埋葬されました。波乱に満ちた短い生涯を、異国の地で終えたのでした。

もう一度検索