フィリピンにおけるコーヒー生産

フィリピンのコーヒー産業

フィリピンにおけるコーヒー生産は、1740年にスペインによってコーヒーが持ち込まれたことに始まります。かつてはフィリピン経済の重要な柱の一つであり、約200年前には世界第4位のコーヒー輸出国でした。しかし、現在では国内需要を大きく輸入に頼る状況となっています。

現状

2014年時点でのフィリピンのコーヒー生産量は約25,000トンで、農産物の中では110位となっています。一方で、国内の年間消費量は約100,000トンと需要が非常に高く、供給が追いついていない状況です。フィリピンは、アラビカ種、リベリカ種（バラコ）、エクセルサ種、ロブスタ種の主要4品種を栽培している数少ない国の一つです。しかし、生産量の約90%はロブスタ種が占めています。現在、フィリピンではコーヒー産業の再活性化に向けた取り組みが進められています。

歴史

フィリピンにおけるコーヒー栽培の歴史は、1740年にフランシスコ会の修道士がバタンガス州のリパにコーヒーの木を植えたことに始まります。メキシコから輸入されたコーヒーの木は、その後、アウグスティヌス会の修道士たちによって、アイバーン、レメリー、サンホセ、タール、タナウアンといったバタンガス州の他の地域にも広められました。コーヒー栽培はバタンガス州の経済を支え、リパは「フィリピンのコーヒー首都」と呼ばれるようになりました。

1865年、南北戦争後のアメリカでは、ブラジル産のコーヒーよりも安価なフィリピン産コーヒーの需要が急増しました。バタンガス州のバラコ・コーヒーはマニラからサンフランシスコへ輸出され、その年のフィリピン産コーヒーの半分がサンフランシスコに送られました。1869年のスエズ運河開通後はヨーロッパへの輸出も始まりました。1876年には隣接するカヴィテ州のアマデオでもコーヒー栽培が始まりましたが、依然としてリパが主要な生産地であり、バラココーヒーの価格はジャワコーヒーの5倍に達しました。

1880年、フィリピンは世界第4位のコーヒー豆輸出国となりました。1887年から1889年にかけて、コーヒー生産の競合国であったブラジル、アフリカ、ジャワでコーヒー錆病が蔓延し、生産量が激減しました。この時、フィリピンは世界で唯一のコーヒー供給国となり、その存在感を高めました。

しかし、1889年、フィリピンでもコーヒー錆病が蔓延し、さらに害虫被害も加わって、コーヒー生産量は激減しました。1891年には、総生産量が1889年の6分の1にまで落ち込み、バタンガス州のコーヒー農園は事実上壊滅しました。この時期にブラジルはコーヒー生産国としての地位を取り戻し、フィリピンのコーヒー農家は他の作物への転作を余儀なくされました。

1950年代、アメリカの支援を受けて、フィリピン政府は病気に強い品種を導入し、インスタントコーヒーの生産も開始しました。1960年代には多くの農家がコーヒー生産を再開し、一時的にコーヒーの国際価格が暴落しました。1980年、フィリピンは国際コーヒー機関（ICO）に加盟しました。

まとめ

フィリピンのコーヒー産業は、かつては世界をリードする存在でしたが、病害によって衰退しました。しかし、現在では再びコーヒー生産の活性化に向けた動きが見られます。フィリピンが再びコーヒー輸出国として復活するのか、今後の動向が注目されます。

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