フィルシー・サーティーン

フィルシー・サーティーン：伝説の空挺部隊の真実

第二次世界大戦下のアメリカ陸軍に、第101空挺師団第506落下傘歩兵連隊の中に「フィルシー・サーティーン(汚れた13人)」と呼ばれる伝説的な部隊が存在しました。正式名称は第506落下傘歩兵連隊連隊本部中隊付第1爆破工作分隊。1944年6月6日、ノルマンディー上陸作戦でフランスに降下したこの部隊は、その破天荒な行動と数々の成功した危険任務で知られています。

規律を無視する精鋭たち

フィルシー・サーティーンは、規律違反者や素行不良者が集められた部隊でした。隊員たちはしばしば敬礼を欠いたり、上官をニックネームで呼んだりするなど、軍規を軽視していました。しかし、その一方で、彼らは並外れた戦闘能力と任務遂行能力を備えており、上官からの信頼も厚かったのです。その象徴が、部隊を率いたジェイク・マクニースです。マクニース自身もトラブルメーカーとして有名でしたが、卓越したリーダーシップで部隊をまとめ上げました。

彼らの破天荒さは、イギリス駐屯時代にも顕著に表れています。質素な食事に不満を持ったマクニースは、駐屯地の敷地内で無断でシカ狩りを行い、さらに養殖場からマスを盗み、隊員たちにふるまったのです。その結果、莫大な賠償金を支払う羽目になりました。また、衛生面も徹底的に無視し、長期間入浴せず、制服も洗濯せず、このことから「フィルシー・サーティーン」の通称が定着しました。

独特の風貌と伝説

ヨーロッパへの派遣を控えていた頃、隊員たちはモヒカン刈りにし、「インディアン」風の戦化粧を施しました。これはマクニースのアイデアで、夜間の迷彩効果を狙ったものだったと言われています。この風貌の写真が雑誌に掲載されると、フィルシー・サーティーンは一躍大衆の注目を集め、様々な伝説が生まれました。

ノルマンディー上陸作戦では、激しい対空砲火により予定地点から離れた場所に降下。多くの損害を受けながらも、マクニース率いる残存部隊は、持ち前の戦闘力で任務を遂行しました。マーケット・ガーデン作戦にも参加し、その後は別々の部隊に配属されましたが、彼らの活躍は、多くの兵士たちに語り継がれました。

映画『特攻大作戦』との関係

フィルシー・サーティーンの伝説は、E・M・ナサンソンの小説『12人の囚人兵』、そしてその映画化作品『特攻大作戦』に大きな影響を与えました。しかし、映画はフィクションであり、フィルシー・サーティーンの隊員たちが全員重罪犯だったという設定など、史実とは大きく異なっています。

映画の制作にあたり、マクニースは製作側にフィルシー・サーティーンの物語を映画化することを拒否しましたが、彼の証言を反映した映画にはなりませんでした。映画は、誇張された噂や伝説に基づいて作られたものであり、史実とは異なる部分が多いとマクニース自身も認めています。それでも、映画を通じて、フィルシー・サーティーンは広く知られる存在となりました。

ミッション・コマンドの先駆け？

マクニースの指揮スタイルは、現代の軍事用語で言う「ミッション・コマンド」の初期の成功例として注目されています。マクニースは上官からの信頼を基盤に、部下にも信頼を寄せ、任務の遂行方法を委任する柔軟な指揮を執りました。これは、2003年にアメリカ陸軍の戦闘教義に取り入れられたミッション・コマンドの概念を先取りしていたと言えるかもしれません。

まとめ

フィルシー・サーティーンは、規律を無視する「ならず者」集団でしたが、同時に並外れた戦闘能力と任務遂行能力を備えた精鋭部隊でした。彼らの伝説は、映画『特攻大作戦』によってさらに広まりましたが、その実像は、規律を軽視しながらも、困難な任務を成功させ、上官からの信頼も得ていた、複雑な部隊だったと言えます。彼らの物語は、戦争の残酷さと人間の複雑さを改めて考えさせるものです。彼らの功績と伝説は、これからも語り継がれていくでしょう。

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