フィルムバッジ

フィルムバッジとは

フィルムバッジ（film badge）は、放射線測定に用いられる線量計の一種であり、個人の外部被曝線量を測定するために使用されます。放射線検出用の写真フィルムの小片を、適切なフィルターを備えたケースに収めた構造をしています。

仕組み

フィルムバッジは、写真フィルムの乳剤が放射線（X線、γ線など）を浴びると黒化する性質を利用しています。放射線業務従事者が作業中に身につけ、一定時間後にフィルムを取り出して現像します。フィルムの黒化度合いを測定することで、被曝線量を算出します。

特徴

フィルムバッジには、以下のような長所と短所があります。

長所

線種ごとの測定: X線、γ線、β線、中性子線を分離して、それぞれの線量を測定・評価できます。
エネルギー情報の取得: 入射した放射線のエネルギーに関する情報を得ることができます。
使いやすさ: 使用方法が簡単で、衝撃にも強いです。
携帯性: 小型軽量で、単価も安いです。
長期保存: 測定後のフィルムは長期間保存でき、必要に応じて再評価が可能です。

短所

線量判定の煩雑さ: 線量判定の処理に手間がかかります。
評価時間の遅さ: 被曝線量の評価に時間がかかります。
潜像退行: 潜像退行（放射線がフィルムに当たった後、現像するまでの間に像が薄れる現象）の影響を受けやすいです。

まとめ

フィルムバッジは、放射線測定の分野で長く使われてきた信頼性の高い測定器です。複数の放射線を区別して測定できる点や、使いやすさ、コストの低さがメリットです。一方で、線量評価に時間がかかる点や、潜像退行の影響を受けやすい点に注意が必要です。これらの特徴を踏まえ、使用目的に合わせて適切な放射線測定器を選ぶことが重要です。

参考文献

* 辻本 忠, 草間 朋子『放射線防護の基礎』（第３版）、2001年。

もう一度検索