フィレンツェの怪物事件

フィレンツェの怪物事件

フィレンツェの怪物事件（Il Mostro di Firenze）は、1970年代から1980年代にかけてイタリアのフィレンツェ近郊で発生した衝撃的な連続殺人事件であり、特にカップルを狙った犯行が特徴でした。これまでに確認されているところでは、8組のカップル、合計16名が殺害されていますが、事件は未解決のままとなっています。

事件の概要と呼称

この事件は「フィレンツェの怪物」という名で知られていますが、これは事件の犯人に付けられた通称です。犯行の手口や残虐性から「怪物」と名付けられるに至りました。また、この事件は単にカップル殺人事件とも呼ばれることがあります。

犯行の特徴

犯人は主に夏の月のない夜、休日前の晩に活動を行い、ドライブ中のカップルをターゲットにしました。使用された凶器は22口径のベレッタで、被害者を射殺すると同時に、一部の女性被害者には刃物での刺傷や切断といった残酷な行為が行われました。犯行は年に1回ほどのペースで起きており、通常の連続殺人事件とは異なり、犯行間隔が短くなることはありませんでした。また、被害者の選定に際しては一貫したパターンが見られませんでした。

主要な事件の経緯

第一期（1974年）

1974年9月14日、フィレンツェ郊外のボルゴ・サン・ロレンツォのブドウ畑近くに車内で発見された男女の死体が、事件の幕を開けました。男性は現場で射殺され、女性には96箇所に及ぶ刺し傷があり、さらには性的な憎悪が感じられる配置でブドウの蔓が挿入されていたことから、悪魔崇拝に関連する噂も広がりました。

第二期（1981年から1985年）

1981年6月6日には、結婚式を控えた男女が買い物途中に殺害され、男性は射殺された後、女性は多くの刺し傷を負いました。さらに同年10月22日にはカレンツァーノでの別の女性と男性の遺体が発見され、これによって捜査は混乱を極めました。1982年から1985年にかけても、モンテスペルトリでの射殺事件や、フランス人カップルのキャンプ中の襲撃など、様々な事件が次々と起きました。

同一犯の可能性

事件が発生するより前の1968年にも、フィレンツェ郊外での男女の射殺事件があり、一部の専門家はこの事件との関連を指摘しています。さらに、1980年代に娼婦が殺害された事件の凶器が、本事件の凶器と一致する可能性があると言われています。

その後の展開

1993年には一人の農夫が容疑者として逮捕されましたが、彼は自らの無実を主張したまま、1998年に心臓発作で亡くなっています。長年にわたって解決を見ないこの事件は、フィレンツェ市内外で今もなお語り継がれています。

文化的影響

フィレンツェの怪物事件は、ノンフィクション作家や映画作品に多大な影響を与えています。島村菜津やマリオ・スペッツィによる書籍が代表的で、事件に関連するフィクションも多く存在します。トマス・ハリスの小説『ハンニバル』や、映画『ミッドナイトリッパー』なども、この事件にインスパイアを受けた作品の一例です。

このように、フィレンツェの怪物事件はイタリアの歴史に深い影響を与えた未解決事件として記憶され続けています。

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