フェイシズ (1968年の映画)

『フェイシズ』（Faces）は、1968年に公開されたアメリカ合衆国のインディペンデント映画です。ジョン・カサヴェテスが監督と脚本を務め、ジーナ・ローランズとジョン・マーレイが主演を務めることで知られています。

カサヴェテスは、それまでハリウッドで経験した製作体制への不満から、本作の制作を決意しました。ハリウッドでの仕事に疲弊し、自身の表現方法を追求したいという強い思いがあったのです。彼は私財を投じ、自身の自宅を抵当に入れて資金を調達しました。撮影や編集作業も自宅で行われ、まさに自主制作の精神で本作は完成しました。制作期間は3年に及びました。

映画の内容は、離婚の危機に瀕した中流階級のアメリカ人夫婦36時間を描いた物語です。夫婦の葛藤や心の内面をリアルに、そして繊細に描き出しています。日常生活の中に潜む、複雑な人間関係や感情の揺らぎを丁寧に表現した作品となっています。

『フェイシズ』は公開当時から高い評価を得ました。ジョン・マーレイは、ヴェネツィア国際映画祭で男優賞を受賞するなど、俳優陣の演技力も高く評価されました。また、第41回アカデミー賞では3部門にノミネートされ、ハリウッドにおいてもその芸術的価値が認められました。

現代においては、『フェイシズ』はインディペンデント映画の金字塔として、高い評価を受けています。その革新的な手法や、人間の内面を深く掘り下げた描写は、多くの映画作家に影響を与え、インディペンデント映画の歴史に大きな足跡を残しました。2011年にはアメリカ国立フィルム登録簿にも登録され、アメリカの文化的遺産として永久保存されることとなりました。

『フェイシズ』は、単なる映画作品という枠を超え、独立映画製作の可能性を示した、重要な作品と言えるでしょう。ハリウッドの体制に縛られない、アーティストの自由な表現、そして人間の普遍的な感情を追求したカサヴェテスの情熱が凝縮された、まさにインディペンデントスピリットの結晶です。

制作陣には、監督・脚本のジョン・カサヴェテスに加え、製作にモーリス・マクエンドリー、撮影にアル・ルバン、音楽にジャック・アッケランが参加しています。これらの才能あるスタッフの貢献も、『フェイシズ』の高い完成度に繋がっています。

この作品は、カサヴェテスの代表作の一つとして、現在も世界中の映画ファンから高い評価を受け続けており、映画史に燦然と輝く傑作として、後世に語り継がれることでしょう。様々な文献や評論においても高い評価を受け、現代の映画制作にも多大な影響を与え続けています。参考文献として、レイ・カーニーの『The Films of John Cassavetes』や『Cassavetes on Cassavetes』などが挙げられます。これらの文献は、『フェイシズ』を深く理解する上で非常に役立ちます。

もう一度検索