フェス (紋章学)

紋章学におけるフェス(Fess)の詳細解説

フェス（英: Fess、仏: Fasce）とは、紋章学において、シールド（盾）の中央を左右の端から端まで水平に走る帯状のチャージのことです。チーフ、ベンド、シェブロン、ペイルと並び、紋章学における基本的なオーディナリー（紋章の基本的な構成要素）の一つとして重要な役割を果たします。

フェスの幅について

フェスの幅は、シールドのどのくらいの割合を占めるかについて、紋章官の間でも見解が分かれています。一般的にはシールドの幅の1/5から1/3程度とされています。フェスの上に他のチャージが配置されていない場合は、1/5程度の幅が支持される傾向にあります。しかし、フェスの上にチャージが重ねられている場合は、その分フェス自体の幅が広くなるのが一般的です。

バー(Bar)との違い

バーは、フェスのディミニュティブ（縮小形）として扱われることがありますが、その幅はフェスと比べて必ずしも細いとは限りません。そのため、バーを単に幅の狭いフェスとして扱うのは適切ではありません。フェスはシールドの中心を通過する横帯として定義され、この中心点は「フェス・ポイント」と呼ばれます。

複数の横帯を使用する場合、特にシールドの上部（チーフ側）や下部（ベース側）に寄っているものをバーと呼ぶことが多いです。ただし、バーを1本だけで使用することは非常に稀です。イギリスの紋章学では、フェスはフェス・ポイントを通過するという原則があるため、2本以上の横帯はバーとして扱われます。

ディミニュティブ（縮小形）

シールドの端に届かないフェスは、かつてはヒューミッティと呼ばれていましたが、現在では「クーペド」という用語で置き換えられています。ただし、クーペドはフェスやクロスなどの特定のチャージにのみ使用され、他のオーディナリーやチャージには別の用語が用いられます。

バーのディミニュティブとしては、幅が約1/2のバーリュレットがあります。ただし、フェスとバーの幅に明確な定義がないため、1/2という数字はあくまで目安です。2本のバーリュレットを近接して配置したものは、バーズ・ジェメレスと呼ばれ、1つのチャージとして扱われます。

フェスやバーには、ベンドと同様に、コティスと呼ばれる細い帯を添えることができます。コティスを外側に2本追加して挟んだ状態は、ダブリー・コティスドと呼ばれます。ダブリー・コティスドは「between two bars gemelles」と記述することも可能です。

紋章学では、紋章は紋章記述によって定義されるため、図案が同じでも記述が異なれば別の紋章として扱われることに注意が必要です。

フェスに関する用語

イン・フェス (in fess): 複数のチャージが水平に一列に並んでいる状態を表します。チャージが1つの場合は、フェスワイズと同義です。
フェスワイズ (fesswise): チャージがフェスのように水平方向（真横）に配置されていることを意味します。
パーティ・パー・フェス (party per fess): フェスの方向に走る線でフィールドを2分割します。分割されたフィールドの色を上から順に記述します。
ティアスト・パー・フェス (tierced per fess): フェスの方向に走る2本の線でフィールドを3分割します。分割されたフィールドの色を上、中、下の順に記述します。
* バリー (barry): 水平方向に4つ以上の偶数の部分に分割されたフィールドを指します。複数のバーを配置したように見えますが、バリーは等間隔で色分けされていればよく、端の領域が帯状でなくても構いません。バーの場合は、指定された数の帯が過不足なく揃っている必要があります。

特殊な例

城壁のような模様を持つミューラル・フェスという特殊な例も存在します。また、帯の中央3分の1がシェブロンに変化したフェスも存在します。

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