フェスティバル/トーキョー

フェスティバル/トーキョー（略称: F/T）は、東京都内、特に豊島区の劇場やスペースを主な会場として開催されていた国際的な舞台芸術フェスティバルです。その歴史は古く、1988年に池袋で始まった『東京国際演劇祭'88池袋』を源流としています。以降、時代と共に名称や運営体制を変えながら継続され、『東京国際舞台芸術フェスティバル』、『東京国際芸術祭（TIF）』といった名を経て、2009年から現在の『フェスティバル/トーキョー』として開催されるようになりました。このフェスティバルは、2020年秋の『フェスティバル / トーキョー20』をもってその活動を終了しています。

概要とプログラム

「日本最大級の国際舞台芸術フェスティバル」を標榜していたF/Tは、国内外から招聘した最先端の舞台作品の上演や、新たな作品の創造（クリエーション）を積極的に行っていました。また、単に作品を見せるだけでなく、舞台芸術を巡る議論を深めるシンポジウムや、将来を担う人材を育成するための教育プログラムなども併せて実施していました。F/Tの大きな特徴の一つに「脱舞台」というテーマがありました。これは、従来の劇場空間での上演という枠組みにとらわれず、特殊な場所や形式で行われる演劇やパフォーマンスも積極的に取り上げるという姿勢を示しています。

近年では、劇場という閉じられた空間を飛び出し、街中や屋外の広がりの中でパフォーマンスを行う「まちなかパフォーマンスシリーズ」を展開しました。また、アジアの特定の国に焦点を当て、その多様な文化や社会を舞台芸術を通して紹介する「アジアシリーズ」も企画の柱となっていました。大規模な屋外施設を利用したオープニングイベントや、海外のアーティストとの国際共同製作作品の上演も、フェスティバルの魅力を高める要素でした。

運営と財政

フェスティバルの運営は、当初は各回ごとに実行委員会が組織され、任命された事務局長が事務局を運営するという形をとっていました。しかし、フェスティバルを安定的に継続させるために、2000年3月には特定非営利活動法人アートネットワーク・ジャパンが設立され、一時的にフェスティバルの主催を担いました。その後、『フェスティバル/トーキョー09春』からは再び各回実行委員会方式に戻り、アートネットワーク・ジャパンは事務局機能を担うという体制に移行しました。F/Tの実行委員会は、アートネットワーク・ジャパンに加え、東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団、豊島区、公益財団法人としま未来文化財団といった行政や公共財団が参加する形で構成されていました。

フェスティバルの継続的な実施にあたっては、財政基盤の確保、特に助成金の獲得が常に大きな課題でした。例えば、かつてプログラム・ディレクターを務めた相馬千秋氏によると、助成金申請が通らず再申請を余儀なくされたり、通常は頻繁には受給できない文化庁の助成金を得るためにフェスティバルの名称を変更するといった苦労もあったと言われています。しかし、東京都が東京オリンピック招致に関連して文化予算を拡充し、「東京文化発信プロジェクト」の枠組みが作られたことで、F/Tは東京都から安定的な財政支援を得られるようになり、これが運営基盤の強化に繋がりました。アートネットワーク・ジャパンは、F/Tの運営以外にも、たちかわ創造舎などの施設運営や他の文化事業も手がけています。

歴代ディレクター

フェスティバルの節目には様々なディレクターが運営やプログラム編成を担いました。

市村作知雄（2002年-2007年 TIFディレクター、2008年エグゼクティブディレクター、2014年-2017年）
相馬千秋（2008年 TIFディレクター、2009年-2013年プログラム・ディレクター）
長嶋確（2018年- 共同ディレクターに河合千佳）

開催履歴

名称と形式を変えながら、以下のように開催されてきました。

1988年: 東京国際演劇祭'88池袋
1990年: 東京国際演劇祭'90
1992年: 東京国際演劇祭'92
1995年: 東京国際舞台芸術フェスティバル'95
1997年: 東京国際舞台芸術フェスティバル'97
1999年: 東京国際舞台芸術フェスティバル'99
2000年: 東京国際舞台芸術フェスティバル2000
2001年: 東京国際舞台芸術フェスティバル2001
2002年: 東京国際芸術祭
2004年: ユーラシア・フェスティバル - 東京国際芸術祭10回記念
2005年: 東京国際芸術祭2005
2006年: 東京国際芸術祭2006
2007年: 東京国際芸術祭2007
2008年: 東京国際芸術祭2008
2009年春: フェスティバル/トーキョー09春
2009年秋: フェスティバル/トーキョー09秋
2010年: フェスティバル/トーキョー10
2011年: フェスティバル/トーキョー11
2012年: フェスティバル/トーキョー12
2013年: フェスティバル/トーキョー13
2014年: フェスティバル/トーキョー14
2015年: フェスティバル/トーキョー15
2016年: フェスティバル/トーキョー16
2017年: フェスティバル/トーキョー17
2018年: フェスティバル/トーキョー18
2019年: フェスティバル/トーキョー19
2020年: フェスティバル/トーキョー20（最終回）

刊行物

フェスティバルに関連して、公演パンフレットや活動の記録などが刊行されています。

『ロメオ・カステルッチ神曲―三部作パンフレット』
『フェスティバル/トーキョー09ドキュメント』
『個室都市東京―ドキュメント』
『フェスティバル/トーキョー10ドキュメント』
『フェスティバル/トーキョー11ドキュメント』
『はじまりの対話 PortB「国民投票プロジェクト」現代詩手帖特集版』
* 『フェスティバル/トーキョー12ドキュメント』

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