フェズ (帽子)

フェズとは

フェズ（トルコ語: fes）は、円筒形をした帽子で、頭頂部に房が垂れ下がった形が特徴です。多くの場合、鮮やかな赤色やえんじ色で作られます。この名前はモロッコの都市フェズに由来していますが、日本では「トルコ帽」として知られ、エジプトではタルブーシュ（アラビア語: طربوش‎）と呼ばれることもあります。フェズは、19世紀から20世紀初頭にかけてオスマン帝国及びその周辺地域で広く流行し、現在でもいくつかの国でその影響が見られます。

歴史的背景

この帽子の起源はモロッコにあり、オスマン帝国のマフムト2世による近代化改革の一環として採用されました。それまで、ムスリムたちは主にターバンを巻いていましたが、フェズはその代替品となり、文官や武官といった幅広い層に支持されました。フェズは、オスマン帝国において近代化を象徴するアイテムとして受け入れられ、ムスリム、キリスト教徒、ユダヤ教徒の間でも広く着用されるようになりました。特に19世紀末には、フェズとフロックコートを組み合わせたスタイルが「ハイカラさん」として親しまれていました。

しかし、1925年にムスタファ・ケマル・パシャがトルコ共和国を樹立した際、フェズは旧体制の象徴とされ、着用が禁止されました。この禁止令は逮捕などの強制措置を伴うもので、多くの人々に影響を及ぼしました。ドウルマイ・トルコでは土産物以外ではほとんど見られない状態となっています。また、政教分離の政策により、公務員のフェズの着用は法律で禁じられています。

その他の地域でのフェズ

トルコでの使用が禁止された後、シリアやエジプト、ボスニアなどの旧オスマン帝国地域では依然として着用されていましたが、時代の流れと共にその人気は薄れ、多様な服装が普及する中で姿を消してしまいました。しかし、フェズの発祥地であるモロッコでは、今日でも伝統的な民族衣装として残っていますが、現在の日常生活ではあまり一般的ではなくなっています。

また、チュニジアではフェズの一種としてシェシーア（شاشية）と呼ばれるものが作られており、フェルト素材が原料となっています。さらに、マレーシアやインドネシアでは、ソンコック（Peciとも呼ばれる）という類似した形状の帽子をムスリムが使用しています。

まとめ

フェズは文化的背景を持つ独特な帽子であり、その歴史はオスマン帝国の近代化と密接に関連しています。現在では限られた地域でしか見られなくなっていますが、その影響は様々な国や文化に残っています。

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