フェッチロボティクス

フェッチロボティクス：自律移動ロボットで物流と製造現場を変革する

フェッチロボティクス（Fetch Robotics, Inc.）は、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼに本社を置く自律移動ロボット（AMR）メーカーです。同社は、ロボット開発をソフトウェア開発の一環と捉え、「私たちはたまたまロボットを作っているソフトウェア企業だ」というユニークな視点を持っています。このソフトウェア中心のアプローチが、同社の革新的な製品開発を支えています。

創業の背景

フェッチロボティクスの歴史は、Robot Operating System (ROS)の開発で知られるウィローガレージの閉鎖に端を発します。2013年2月、ウィローガレージの閉鎖に伴い、技術者たちは8つのスピンオフ企業を設立しました。その一つが、開発マネージャーであったメロニー・ワイズ氏が立ち上げたアンバウンデッド・ロボティクス社です。同社はモバイルマニピュレータUBR-1（ユーバー・ワン）を発表しましたが、スピンオフ契約により資金調達が難しく解散しました。その後、ワイズ氏を含む4人のメンバーは、ロボティクス技術者を募集していたSteve Hogan氏のFYSシステムズ社に合流し、社名をフェッチロボティクスに変更しました。

主力製品：フレイト（Freight）

フェッチロボティクスの主力製品は、モバイル・ベース用AMR「フレイト（Freight）」です。フレイトは、自律移動機能に加え、作業員に追従する「Follow Pick」機能や、他のAMRと連携して搬送を行う「Fetch」機能を持っています。フレイトを利用するには、まずレーザーセンサーで倉庫のデジタル地図を作成し、棚の位置や商品情報をアノテーションする必要があります。これにより、従来のAGV（無人搬送車）のようにマーカー設置が不要となり、設備コストを削減できます。また、倉庫レイアウトの変更時も、デジタル地図を更新するだけで対応できるため、柔軟性が高いのが特徴です。

フレイトは、HMIShelfやタブレット、スマートフォンから操作でき、「追従」「充電」「停止」といった基本操作に加え、商品の搬送や目的地への移動といった自律的な動作も設定できます。また、SAP社の倉庫管理システムと連携することで、「Virtual Conveyor」という自動倉庫ソリューションを提供しています。

フレイトには、様々なオプションが用意されています。ロボット管理ソフトウェア「Fetchcore」、フレイトの上に棚を搭載する「HMIShelf」、カートを搭載する「cartdock」、センサーを取り付ける「data survey」などがあります。特に、「data survey」は、サードパーティのハードウェアやソフトウェアと組み合わせることで、棚の画像認識やRFIDタグによる在庫管理など、様々なソリューションを提供できます。

さらに、フレイトの機能拡張として、「RollerTop」と「CartConnect」というプラグインモジュールも提供されています。「RollerTop」は、コンベア間の荷物搬送を可能にし、「CartConnect」は、専用カートをフレイトが持ち上げて搬送することを可能にします。また、フレイトにはペイロード（積載量）の異なる複数のモデルがあり、最大1500kgまで搬送可能なモデルも提供されています。

主力製品：フェッチ（Fetch）

フェッチロボティクスのもう一つの主力製品は、モバイル・マニピュレーター用AMR「フェッチ（Fetch）」です。フェッチは、ロボットアームを備え、商品をピックアップする機能を有しています。従来のロボットアーム搭載ロボットは据え置き型が多かったのに対し、フェッチは障害物を避けながら自律的に移動できます。フェッチのアームは7自由度を持ち、最大6kgの商品をピックアップできます。ただし、フェッチ自体は棚に置かれた商品が何であるかを識別できないため、棚の情報と場所を元に商品を識別しています。

沿革

2013年2月：ウィローガレージ解散、メロニー・ワイズ氏がアンバウンデッド・ロボティクス社を設立
2013年10月21日：アンバウンデッド・ロボティクス社がモバイルマニピュレータUBR-1を発表
2014年4月18日：UBR-1の販売受付開始
2014年8月25日：アンバウンデッド・ロボティクス社解散、FYSシステムズがフェッチロボティクスに改名
2015年2月9日：シリーズAラウンドで300万ドルを調達
2015年4月29日：「Fetch」と「Freight」を発表
2015年6月17日：シリーズAラウンドで2000万ドルを調達
2015年7月22日：イノベーション・マトリックス社と代理店契約を締結
2016年5月10日：SAP EWMと提携しVirtual Conveyorを提供開始
2017年1月12日：Trax Image Recognition社と提携
2017年3月30日：「Freight500」と「Freight1500」を発表
2017年8月15日：DHLが移動ロボットを活用した実証実験に成功
2017年8月21日：Surgere社と提携
2017年12月6日：シリーズBラウンドで2500万ドルを調達
2018年4月5日：VirtualConveyor向けプラグインモジュールRollerTopとCartConnectを発表
2019年7月23日：シリーズCラウンドで4600万ドルを調達

まとめ

フェッチロボティクスは、自律移動ロボット技術を駆使し、物流倉庫や製造現場の自動化を推進しています。フレイトとフェッチという主力製品を中心に、多様なニーズに対応するソリューションを提供しており、今後の成長が期待されます。

参考情報

ウィローガレージ
Fetch Robotics

もう一度検索